第八図 車のおと

 その後は日々列かがなべて、何時いつ何時いつかと朝な夕なに心許こころもとなく慅々そわそわしつつ待望まちもうけていたけれど、ついにその日はやって来た。

 車の音がしたのでそれと知られて心躍らせながら見に出ると、くだんの女房はかねおとない来たった折と打って変わって、此度こたびきららかに着栄きはやした数多の女房や侍を引き具している。その中には雨も降らぬに傘を差している者があり、下車おりやる女房達も、見れば婀娜あだめく女像めのすがたにしてかしらひねる者あり、面持ち豊下ふくよかにして窈窕しとやかなる者ありと、その雅致みやびやかさ目も及ばずくるめほどであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る