第二図 色しろく

 爾来じらい、心は何処どこ憧憬あくがれてうわの空のままに、定かならざる相覲あいまみえの再びあることをば夙夜あけくれ夢寐むび待望まちもうなが日月ひつきを過ごしていると、七日程あって、又しても前々さきざきの如く女房達は比来たぐえきたのであった。先日さきつひの、衣々きぬぎぬかさねし人もその中に在った。

 この日も不寝ねずの歌詠みなどに興ずるうちに晨明あさけを迎え、女房達が皆々還ろうするところ、色白でほそやかなる可憐な一人の女房に見惚みとれてしまった私は、還りしなの彼女の花衣はなごろもたもと玉章ふみを差し入れる。すると先夜さきのよの人が目聡めざとくもこれを見留みとめて、にもいぶか顔采かおいろを変じた。艶羨うらめし気に蕣顔しゅんがんを崩した面差おもざしも大層愛おしく思われて引き留めようとしたけれど、結句、先夜さきのよの人は恨みがましく此方こなた見遣みやっただけで素気すげなくそのまま還ってしまった。

 このような来往の重なると、まことに女房らの種姓しゅしょうつまびらかならぬが何とも心許こころもとなう思われてならない。


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