とりっく・おあ・とり~と! 魔女と弟子といたずら魔法

特攻君

第1話 ほのぼの三人衆。集結!

 暗い暗い森の中、その奥地に一軒の家が存在している。その森は魔女の森と呼ばれ、その家には魔女が住んでいるのだった。


「ししょ~、ししょ~」


 その家の中を走り回る一人の少女。魔女の弟子であるキャンディーだ。大きなとんがり帽子をかぶった、ツルペタ少女であった。


「なんだい、キャンディー?」


 それに答えたのは、この家の主である魔女のラッキーだ。同じく大きなとんがり帽子をかぶった女性で、胸がとても大きい美人さんであった。


「んと、かぼちゃのおじちゃんに魔法を教えてもらったの」

「かぼちゃ? ああ、ジャック・オー・ランタンかい?」

「そう、ジャックおじさん」

「あの、クソアンデッド。滅びればいいのに……」

「えへへ。いたずら魔法って言うんだって」

「なんだい。もうハロウィンの季節かい」

「それでね、それでね。お菓子をちょうだい!」


 キャンディーが笑顔で両手を出して、お菓子をねだる。とても可愛らしい笑顔で、誰が見てもホッコリしてしまうだろう。


「なにを言ってんだい。虫歯になるから駄目だよ」

「えー! ししょ~のイジワル! いたずらしちゃうぞっ!」

「私にいたずらだって? 百年早いよ」

「ぶー。じゃあ、これで……」


 キャンディーは腰にぶら下げている袋から、小さなかぼちゃを二個取り出した。そして、それを両手で持って魔法を唱えるのであった。


「ししょ~の胸を、かぼちゃにしちゃえっ!」



【トリック・オア・トリート/いたずら魔法】



 大声で唱えられた魔法が発動すると、取り出した二個のかぼちゃが光りだす。すると、その光はラッキーをめがけて飛んできた。それを見た彼女も、魔法を唱えるのであった。


「甘いねえ」



【マジカル・リフレクト/魔法・反射】



 反射の魔法が発動すると、飛んできた光がキャンディーへ戻っていった。すると、ラッキーではなく彼女が光に包まれてしまった。


「きゃー!」


 キャンディーは驚いて、両手で顔を覆っている。そして数秒後に、彼女を包んでいた光が消えた。持っていた二個のかぼちゃも消えている。


「はりゃ?」

「どうかしたかい?」

「むにむに」

「うん?」

「むにむに。ししょ~。あたしの胸が大きくなったよ?」

「大きいって……。小さく膨らんだだけじゃないか」

「むにむに。えへへ」


 キャンディーは自分の胸を触りながらニコニコしている。それを見ているラッキーはあきれていた。


「ジャック!」


 そして、ラッキーは大声で叫んだ。すると、キャンディーの隣に、かぼちゃの顔をした魔物が現れる。そのかぼちゃは、オレンジ色のマントを羽織っていた。


「やあ、ラッキー。久しぶりだね」

「まったく。キャンディーに変な魔法を教えるんじゃないよ」

「あ、ジャックおじさんだあ」

「キャンディーちゃん、残念だったみたいだね」

「でも、見て見て! これであたしも大人の女!」


 両手で胸をむにむにと触っているキャンディーは、ジャックに満面の笑顔を見せる。しかし、ジャックの顔はかぼちゃに穴を空けただけの顔だ。表情がまったく分からなかった。


「これ……。戻るのかい?」

「大丈夫さ。冬がくれば自然とね」

「そうだったね。じゃあ、キャンディーに魔法を教えてくれた礼をあげるよ」

「え?」

「まあ、素直に受け取っときなよ」

「ちょ、ちょっと!」


 ラッキーの目が笑っていない。ジリジリとジャックに近づいていき、持っていた魔法のつえを振り上げて、頭を思いっきり殴りつけた。すると、ジャックのかぼちゃ頭が窓ガラスを割って外へ飛んで行ってしまった。


「あいたあああああっ!」


――――――バリーン!


「はんっ! キャンディーの師匠は、私だよ!」

「ししょ~、ジャックおじさんの頭がないよお?」

「キャンディー。それより、ジャックがお菓子をくれるみたいだよ」

「えっ! 本当? ねえねえ、ジャックおじさん。お菓子をちょうだい?」


 キャンディーは両手をジャックの前に出すが、頭を飛ばされたのであたふたしていた。それを見た彼女がふてくされる。


「ぶー。じゃあ、いたずらしちゃうもんね」


 腰にぶら下げている袋から、今度はカブを取り出す。そして、ジャックに向かって魔法を唱えた。


「ジャックおじさんを、カブにしちゃえっ!」



【トリック・オア・トリート/いたずら魔法】



 キャンディーの魔法が発動すると、手に持ったカブが光りだして、ジャックへ向かい飛んでいった。すると、ジャックの頭にカブが乗っかった。彼はそのカブ頭を抱えて座り込んでしまったのだった。


「ジャックおじさん、大丈夫?」

「うぅぅ……。ばあっ!」

「きゃ!」


 ジャックはキャンディーが近づいたのを確認して、顔を上げて驚かせた。すると、カブに穴ができて、しっかりとした顔になっていた。


「ふぅ。助かったよ、キャンディー」

「ジャックおじさん?」

「そうだよ。僕の昔の顔はカブだったんだ」

「ええっ! そうだったの?」

「じゃあ、お礼にお菓子をあげるね」

「やったー!」


 ジャックはマントの中に手を突っ込んで、棒の付いたキャンディを取り出した。そして、それをキャンディーに渡すのだった。


「キャンディーには、このキャンディをあげるね」

「わーい! ししょ~、もらっちゃったあ」

「まったく。虫歯になるから、食べたら歯を磨くんだよ?」

「はーい!」


 ラッキーから許可をもらったキャンディーは、もらったキャンディをペロペロとなめ始めた。ラッキーとジャックはお互い顔を見合わせて、苦笑いを浮かべるのであった。


☆☆☆☆☆☆おしまい☆☆☆☆☆☆




トリックオアトリート!

お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ!


Copyright(C)2021-特攻君

評価、フォロー、応援を、よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とりっく・おあ・とり~と! 魔女と弟子といたずら魔法 特攻君 @TOKKOKUN

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ