第8話

真夜中にスマホの懐中電灯でゆっくり爪を切る

良く見えていないから油断すると肉を挟む

自分がもし肉として食されるならば何がいいだろう

パチン、パチンと痛くないところは私から離れてただカルシウムの塊になる


パラパラとゴミ箱へ捨てる

髪も爪も皮膚も全て私と繋がりいつかゴミとなり、まるで私と関係なくなる


「椎名教授」

「君は暇なのか」

呼びかけただけでうんざりした顔をした

最近講義が終われば空いた時間は椎名教授の元へ通い手伝いをしていた

「暇じゃありません」

眉間に皺を寄せ言うと不思議そうに首をかしげた

「ではなぜ僕に会いに来るんだい」

「椎名教授さては友達居ませんね?」図星をついたのか彼は一瞬口をつぐんだ

「…失礼だな」

「普通は友達というのはたわいない会話をするものですよ」

「そうなのかい?」

「そうですよ」

ふぅんと言う教授へ友達というものを説教したが私もよく分からない

「そうだ、教授は食べられるなら何がいいですか?」

「は。」

わけがわからない、と顔に書いていた

まぁ私もそうだ

「なんと言うか昨日ふと思って。もし誰かが私を食べるなら焼肉がいいかシチューか、肉まんか」

「君はカニバリズム研究でもしているのか」

「いいえ?」真顔で返すと少し困ったような教授が目を逸らし遠くを見た

「人間は雑食だから食べても酸っぱいようだが。また固く食用には向かない」

「そうなんですか」割と驚きを顕著に言うと

頷いてこちらを向いた

「僕は刺身がいいな」

「は?」今度は私が聞き返した

「どうせ食べられるなら味わいながら食べて欲しいだろ」

「なんかエロいですね」

「いやなんでそうなるんだい。」

「だって舌で肉体を味わう…キスとかと似てません?」

「死んでたら情緒も何も無いだろ」

「そうですかね」

「くだらない」

吐き捨てた後丸めたポスターに似た更にダンボールへ入れ私へ手渡した

「2階視聴覚室c-2クラスへ」

よろしくと言い残しどこかへ行く

「ちぇー」と呟いた

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椎名教授と私 白井 くらげ @shikome

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