赤き月下に散り、日の下に舞う桜吹雪。
少年"山根 葉月"は少女と出会う。
直前に目にした花と同じ、"桜"と――
亜麻色の髪を持つ美少女――に見える体になった少年、「葉月」と。
偶然にも彼と出会った少女「桜」の、和風異世界ファンタジー。
個人的には和を基盤とした独自の世界観を推していきたい作品ですが、
やはり分かりやすい魅力となれば、登場人物……それも主人公たちでしょう。
病弱だった主人公が気がついたら異世界に流れ着き、どうしたことか見た目が美少女となっていた。
そんな彼と行動を共にするヒロインは、状況理解が早く、逐一主人公の行動を補助してくれるので、読んでいて安心感がある女の子です。
彼女は主人公が思わず口ずさんだ現代の言葉を、即座に使い方を理解してノッてくれる一面があり、私個人が気に入っているシーンがいくつかあります。
また全体の文章も安定感があり、豊富な語彙と描写、詰め込み過ぎない用語説明も、本作の魅力の一つと言えます。
花鳥風月を感じられる和の世界。
このレビューを切っ掛けに、桜と月を結ぶ言の葉の物語を読む方が、一人でも多く表れてくれることを願っております。