第6話 街の活気
「ここがガデン街か」
「さて、お前は今から冒険者ギルドに向かうんだろ?」
「ああ、金を稼ぐには一番手っ取り早いし、ぼ……俺には俺の目的があるからな」
「ククッ……おいおいそう睨むなよ……ククッ」
「……はぁ」
あれから数時間後、すっかり明るくなった空の下でぼ……俺たちはガデン街に到着した。
グランは俺が言われた通り『俺』と言った時、(特に言い間違えそうになった時)笑ってくるのでその度俺はグランを睨むのだった。
グランが言うには冒険者ギルドで『僕』なんて言ったら、それも俺のようなガキは世間知らずの坊ちゃんだと舐められるらしい。
……まあ、事実なのだが。
まあ、言ってることは分からなくもないし俺も舐められるのは嫌なので従うが、『俺』という度に笑うのはどうにかして欲しかった。
どうやらこの時間帯から入ってくる馬車は少ないらしく、馬車はスムーズに街の門に到着した。
「……あ、そういえば俺身分を証明出来る物とか持ってない」
「ん?あ〜分かった」
「失礼します。身分を証明出来るものはございますか?」
「ほい。あ、連れが持ってねぇから仮身分証作ってくれねぇか?」
「拝見します。……はい、確認しました。仮身分証ですね。銀貨二枚になります」
「ほい」
「あ、俺が払う……」
「いいって、いいって。ほら、仮身分証作ってこい」
「ええ……」
仮身分証とは街にはいるのに自分の身分を証明できない人の為に少し多めの料金を出して作ってもらう身分証の事だ。
しかしあくまで『仮』なので効果は一日しか持たないので、今日中にどこかで身分証を作らないと街を出る度にまた多めにお金を支払わないとけなくなる。
「お名前を伺っても?」
「テルです」
「ではテル様。こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか」
「はい」
俺は門番さんに連れられて個室に入る。
そこには魔法道具であろう水晶とそれに繋がるように設置された魔法陣が描かれた板のようなものがあった。
「ではこの魔法陣にに紋章をかざしてください。紋章の位置が悪い場合魔力を流してもらっても構いません」
「これは?」
「正式名称は違いますが、これは一般的に『犯罪検知器』と呼ばれる魔法道具です。犯罪を犯すとどれだけ隠そうとも犯罪を犯した回数、罪の重さが神によって魂に刻まれると言われています。その総合的な数値を色で表示してくれるのがこの魔法道具です」
「成程、つまり俺がここに紋章をかざして変な色が出たら仮身分証も作って貰えないし捕まると」
「そういうことですね」
罪を償って釈放された元犯罪者はどうなるのだと思ったがこれ以上時間をかけるのはグランに迷惑をかけると思い、背中に背負っていた刀を魔法陣に近づける。
「『器持ち』でしたか」
「ええ。……お?青に光った」
「……はい、大丈夫ですね。青は犯罪歴無しの色です。仮身分証を持っていきますので馬車に戻ってもらっても大丈夫です」
俺は門番さんに言われた通り来た道を通って馬車に戻る。
『器持ち』とは、何となくわかると思うが『紋章の器』を持っている人のことを指す。
前にも言ったが『紋章の器』は『
少し思い出せば分かるが、『月』の名と『七紋章の血族』の貴族名は近しいものがある。
例えば刀の紋章を授かる『サンガシ家』。一年のうち三番目の月は『刀の月』。つまり、この世の器が月の名として使われているのだ。
因みにだが、『七紋章の血族』は六つの貴族家と王族のことであり、王族は『器の月』を表していると言われている。
ならば残り五つの月は?と言うと、実は昔はあったのだが全て没落、もしくは吸収された。
そして没落して平民になった『紋章の器』を持つ元貴族が残した血が時々覚醒するのが一般人が『紋章の器』を授かる理由だとされている。
門番さんもあまり驚いてない様子を見るに、冒険者活動が活発なこの街では時々見かけるのかもしれない。
「お、帰ってきたな。どうだった?まさか赤とかになってねぇよな?」
「なってたらここに戻ってきてませんよ」
「ククッ、確かに!」
青以外に何色があるか知らないがグラン言い方的に赤色は犯罪歴ありの色なのだろう。
どうせなら後で魔道具についても調べておくか。
「お待たせしました。こちらが仮身分証になります」
「どうも」
「おっし、もう行ってもいいよな?」
「はい、ありがとうございました」
グランは門番さんに確認もとって馬車を進める。行き先は馬車を止める場所だ。
「どうする?俺もギルドに用事があるから一緒に行くか?まあ、馬とかを預けるのにちょっと時間かかるが、これでもギルドには顔が利く方でな、済むに登録が進むかもだぜ?」
「いや、そこまで迷惑をかけられない。俺はここで降りるとするよ。助けて貰ったお礼はダークウルフの素材でいいか?」
「そうか、じゃあ縁があればまた会おう。礼はいらねぇよ、言ったろ?お節介だってな」
「そこまで言うなら……だけど恩はいつか返させてもらうよ」
「おう、そんときゃ存分に頼らせてもらうぜ」
グランは笑みを浮かべてそう言った。あの街を出て一番最初に出会った人がグランでよかったと思う。
本気で信頼してる訳では無いが、グランから感じる頼れるおっさん感は警戒をゆるめるには十分だった。
俺は動いてる馬車から降りる。少し危ないが今の俺にはこれぐらい簡単に出来た。
「冒険者ギルドはそこの道を真っ直ぐ行った場所にある!気をつけてなぁ!」
俺はグランの方に少し手を挙げて「ありがとう」の意志を示す。同じ街に居るのだ。またすぐに鉢合わせするかもしれないし、そんな大袈裟な別れの挨拶は要らなかった。
「さて、さっさと冒険者登録して今日はゆっくり寝るかな」
活気溢れた道を少し気だるげな様子で俺は歩くのだった。
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