血の繋がった家族

 今日、娘と喧嘩をした。

 娘は三歳になり、自己主張も強めになった。

 叱るとまではいかないまでも少し口を出すとうるさくなる。

 せっかくの土曜日だと言うのに喧嘩した原因もこのためだ。


 御上家──正午


「おててを合わせて、いただきます!」

「いたらきます」

 きちんと手を合わせて私たちは昼食を頬張る。

 今日の献立は、白米、だし巻き卵、サラダ。

 夫は休日だと言うのに出社したから二人でご飯。

 娘は器用に箸を使ってご飯を食べる。

 娘ももう三歳になったのだし、野菜も食べてくれるだろう。

 と、今日はサラダを出してみたが、どうだろうか。

 娘は白米とだし巻き卵を食うなり、さっさと椅子を降りてしまった。

「ちょっと?サラダ残ってますけど?」

 娘を捕まえてもう一度椅子に座らせた。

「らって、おいしくないんらもん」

「これは農家さんが頑張って作ったお野菜たちなんだよ?」

「ちゃんと食べないとお野菜が悲しむよ?」

 すると、娘は泣きながらトイレに立て籠ってしまった。

 少し言い過ぎただろうか?

 いや、でも私も昔言われた記憶があるし、大丈夫だろう──


 と、言うことがあったのだ。

 ついさっき。

 今もトイレから出てきて部屋の隅っこで遊んでいる。

 子供って難しいなぁ。

 そんなとき、家の固定電話がなった。

 だれだろう?

「もしもし?」

 電話に出てみると相手は実家の母親だった。

「もしもし、佳奈。ひなちゃんは元気?」

 どうやら急なようでもないよう。少し話そう。

「げんきよ?お野菜は食べてないけど」

 娘の方をチラッとみながら言ってみた。

 娘は小さなほっぺたをプクーッと膨らませ、こちらを睨んでいた。

「あら、そうなの?あなたにそっくりね」

 母はそう言った。

 私は野菜をあまり残したことがないはずだが。

「あなたも三歳くらいの時は野菜嫌いだったのよ?」

「覚えてないでしょうけどそれで一度喧嘩したことあったのよ?」

 まるで今の状況だ。

「どうせ、今も喧嘩してるんでしょ?」

 図星である。

「そうね。夜になったら解決すると思うわ。元気ならよかったじゃぁまたね」

 プツッと切れた。

 昔からマイペースな人だったのでどうとも思わなかったが、他の人にもこれをやっていると思うととても迷惑な気がする。

 夜になると解決。そう言っていたがどう言うことだろう?

 そんなこんなで夜が来た。

 夫も帰宅し、三人で食卓を囲むが、相変わらず娘は不機嫌だ。

「佳奈?ひな何かあったのか?」

 私は昼のことを話すと、夫は。

「そういうことか。あんまり無理強いはしない方が良さそうかな?」

 晩御飯は夫がお好み焼きを焼いてくれている。

 お好み焼きには刻んだ野菜たちが入っているが、娘は美味美味と食べている。

 混ぜたら食べれるのかな?

 チラッと娘の方を見るとバッとそっぽを向いた。

 とても不機嫌なのが伝わってくる。

 これは長続きしそうだなぁ。

 と思うと同時に、少し寂しさを覚えた。


 夕飯も食べ終わり、お風呂も浸かった。

 後は寝るだけ。

 夫と娘は先に寝てしまったようだ。

 寝室から鼾が聞こえる。

 娘も布団に包まって寝ているのだろうか。

 すると娘はひょっこりと体を布団の外に出して言った。

「ママ?お野菜ちゃんと食べるから一緒に寝て」

 ウルウルと涙を含んだ目でこっちを見つめてくる。

「今日はごめんね。ママも美味しく味付けするからね」

 そう言うとうん!と頷きぎゅっと抱きついてきた。

 そのまま布団に入るとすぐに寝てしまった。

 そのかわいい寝顔を見てしまえば明日も頑張ろう!と言う気持ちが芽生えた。

 いつもより質の良い睡眠ができそうだ。


 後日談──

 翌朝、母親に電話をしてみることにした。

「もしもしお母さん?」

「あら、昨日ぶりね。どうかした?」

 私がモゴモゴと言葉に詰まっていると。

「あぁ、ひなちゃんと仲直りしたのね」

 また当たった。

 一体どんな超能力だろう。

「うん。でもなんで夜になれば解決すると思ったの?」

「あなたがそうだったからよ」

 と、母は言った。

「あなたと好き嫌いで喧嘩した時も夜になったら寂しくなって一緒に仲直りして寝たのよ」

 と、続けた。

「あなたもひなちゃんもよく似ているわ。だから自分の時とおんなじだろうな。って思っただけよ」

 そうだったんっだ。

 やっぱり私もお母さんの娘なんだな。

「ありがとう。用はそれだけ。またね」

「はい、またみんなで遊びに来なさい。またね」

 来週くらいに一家で遊びに行こう。

 そんなことを考え私は朝食の準備を始めた。

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日常の温かさ 文月 いろは @Iroha_Fumituki

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