ちょっと奇妙な状況下、延々と徒歩でどこかの目的地を目指す、幼なじみ同士の中年男性ふたりのお話。
いわゆる「すこし不思議」な現代もののお話です。普通ではあり得ない超常的な状況、という意味で、現代ファンタジーともSFとも言えそうな物語。
おかげで導入からもう魅力的というか、「(時間の経過ではなく)自分で夜にするかどうかを決める」という普通ではあり得ない状況に、見事に惹きつけられてしまいました。
どういうことなのか気になってもりもり読まされちゃう。
この「すこし不思議」に関して、「何が起こっているのか」は読めば理解できるものの、それ以上の細かい設定が一切ないところが好きです。
気になるといえば気になるのですけれど、でもなくても物語そのものはしっかり成立しているところ。こういう大胆な省略、本当に読んでいて心地良い……。
あとはもう、単純に物語のテーマというか、お話を通して投げかけられる主張が本当に素敵。
単純にポジティブで前向き、というのもあるのですけれど、その語りっぷりの衒いのなさが嬉しい作品でした。
明確なメッセージをぶつけてくれるお話って気持ちいい!