“早退”

あの後ボク達は早退した。


偶然にも家が近かったので一緒に帰ることにした。


「あら、雨降ってるじゃない...」


「傘...ある?」


「ないわ...どうしましょ...」


「ボクと一緒に入るしかないんじゃない...?」


「あら、いいの?狭くなっちゃうわよ?」


「いいよ。」


「それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。ありがとうね。」


「ん...」


帰る時、僕達は無言だった。


すると、ツバサが口を開いた。


「なんか、懐かしいわ」


「え...?」


「昔もこうやって傘を忘れて誰かと一緒に入って帰ったわ。」


「...」


「その誰か...ちょっと顔忘れちゃったけど...アナタによく似ている気がするの。」


「多分それボク...」


「やっぱり...名前を聞いた時、どこか懐かしい気がしたの。」


「昔幼稚園で一緒だったよね。」


「でもアナタすぐに引っ越しちゃったのよね...ちょっとの間だけだけどアタシと遊んでくれてたわよね、楽しかったわ。今でもあの時のこと覚えてるわ...」


「懐かしいな...」


少し無言になったあと、ツバサがまた口を開いた。


「覚えてる?昔アタシが女の子達にいじめられてた時、アナタがアタシの事助けてくれたこと。」


「覚えてるよ。おままごとやりたくて入ろうとしたら『男の子は入らないで!』って言われて、ボクが『男の子だっておままごとしたっていーじゃん。』って言ったんだよね。」


「よくそんな細かいこと覚えてるわね...凄いわ...」


「記憶力はいい方なんで。」


「...あの時はありがとうね。」


「気にすんな。」


話しているとツバサの家に着いた。


「傘ありがとうね。今度お菓子作って持っていくわ。」


「ありがとう。んじゃ、また明日。」


こうしてツバサと話していると時間が経つのが早い。


ツバサはボクの事を覚えていた。


てっきり忘れているかと思ったのに。


ボクは家に着き、ツバサから貰ったら紅茶の準備をする。


前に飲んだ紅茶とは違う匂いだ。


安心する匂い。


紅茶を1口飲んでみた。


優しく包み込んでくれる。


まるでぬくもりと安心を与えてくれる母親のような優しい味だ。


温かい。


親から愛を与えられたかった。























...母さん達なんて居なくなればいいのに。

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ボクとアタシ。 kuu @kuu_desu

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