感想まとめ(ネタバレ注意)
・彼の名はエディ、殺人に最適化された知性を持つ有機稼働体。/偽教授さん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428242151503
一番槍を取ったのは偽教授さん。毎度思うのですが本当に神速です。すげぇ……
「殺戮の為だけに生まれた」とされるキリングマシーン・エディのお話。基本的に淡々と殺人描写が続くのですがこれがまた良い。小気味よく人が殺されていく様子はまさにスラッシャーのお手本のようです。様々な暮らしを営んでいる市井の人々がまるで紙切れのようにスパスパやられていくのはメメントモリを感じますね。
結局公権力は彼を捕まえられず(警官は登場したが失敗)、また、いわゆるファイナル・ガール的な解決者も存在せず、エディの脅威が全く取り払われていない所も恐ろしいです。作中世界の人類はエディの潜在的脅威に晒され続けることとなる……
淡々としている中にもきっちり恐ろしげなゴア描写があり、読む側をオエッとさせてきます。素敵。
・善意か悪意か/Raccoonさん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428254447733
所謂「信頼できない語り手」というタイプの一人称小説です。狂った殺人鬼の視点で進む物語が何とも不気味でサイコホラーしてます。ゾクゾクしますね本当に。
語り手(殺人鬼)は明らかに常軌を逸した考えの持ち主なんですが、「死にたいと思っている人間を殺すことは善行である」という思考の元に動いていて、少なくとも心の内に正当化のロジックをしっかり持っている辺り「知性はあるが理性のタガは外れている」タイプのシリアルキラーであることが分かります。
殺し方に工夫があるところも面白いです。「”善意”で君を殺すけど”悪意”を持って殺し方は考える」という一文があるのですが、これこそまさに語り手(殺人鬼)の悪質さを如実に表していると思っていて、好きなくだりです。
未確認シャーク/あきかんさん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428275296122
神出鬼没のサメが市街地で人を食い殺すサメ映画的な小説。登場人物の一人が言い放った「犯人はサメですね」このセリフが全てを物語っていて、この小説がどんなジャンルのものであるかを一言で表してくれます(私も以前「新聞鮫」で似たような台詞を使いました)。
サメは本来海の生き物(実際には淡水に進出できる種も存在する)ですが、映画のサメはその限りではありません。アニマルパニックでサメを扱う際には「常識にとらわれるな」とよく言います(言いません)が、この小説のサメもまさしく常識外れな扱われ方をしていて面白いです。
また退治シーンにおいてもサメ映画お決まりのアイテム(ガスボンベ、チェーンソー等)が登場して笑わせてくれます。サメ映画ファンに対するサービスが手厚い!あと某悪魔的Z級サメ映画のネタが登場するのですが、これは検索注意です(まだ見ていない方は興味本位で手を出さない方がいいです)。
短いながらもサメ映画愛に溢れた小説でした。好き。
グッドナイト、シスター/尾八原ジュージさん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428296893475
ミッション系の学校宿舎を舞台にしたモンスターパニック。タグに「トンチキ」とある通りのトンチキっぷりで楽しく読めました。まさかのゴリラ系小説だとは思わなかったぜ……
流れるような展開の中にモンスターパニックのお約束のようなシーンがいくつも詰め込まれていて、この手の映画を色々と見てきた私は思わずにんまりとしました。厨房のシーンが特に好きです。怪物がああいう手を使ってくるのいいですよね。この辺りにホラー作家らしい「怖がらせ方」が現れていて好きな部分です。
ラストバトルで主人公と怪物の正体が明かされるのですが、トンチキながらも人ならざる者と化してしまった主人公の悲哀が感じられて素敵でした。これまさか他にも実験体がいる展開じゃないですよね? 第二の敵が現れて再び同胞を殺さなきゃいけない悲しみを背負ってかくかくしかじか……
馬男/ハクセキレイさん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428408395725
コンビニでの店員とのやり取りが洒落にならないSNS炎上騒動に発展してからの……? というサスペンスドラマ的ホラー。SNSを題材に取った現代寓話的な趣も持っています。
殺戮シーンに対して助走となる冒頭の日常描写が相対的に少し長めで、スラッシャーとしてはそこがやや弱点でもあるのですが(スラッシャー映画などでは前フリが長すぎると視聴者が飽きてしまうため)、逆に冒頭の日常描写があるからこそ、突然降って湧いたように出てくる暴徒の理不尽さが際立っていて効果的であったと思います。
犯人の動機も「現実にいそう」感が強く、生々しい恐怖を読者に与えてきます。こういう「現実と地続き」感がある所に、この作品の怖さがある。私はそう思いました。
殺戮の因子/ 登美川ステファニイさん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428443974500
宇宙からやってきて地球人類60億人を大虐殺した凶悪極まりない宇宙蜘蛛と戦う生き残りの人類のお話。SFモンスターパニックであり、残り少ない人類によるサバイバル小説でもあります。
ワクチンを開発していたりバリケードを作って建物に籠城していたり、どこかに女王が存在していてその討伐がミッションになる辺りに物凄く「ありそう」感がします。海外のモンスターパニックを見慣れている人なら「ああ、これだよこれ!」と懐かしい味わいに感じ入ること間違いないでしょう。
ワクチンの正体と博士の思惑が明かされるシーンも面白かったです。が、それだけに「俺たちの戦いはこれからだ」ラストで終わってしまった所がやや残念でした。文字数上限までにはかなり余裕があったので、できれば締めくくりまでを読みたかった……という思いがあります。
マーダー・オブ・ハロウィン 恐怖の殺戮カボチャ/武州人也
https://kakuyomu.jp/works/16816700427514061863
自作。一人の少年が酷いいじめを受けて川に飛び込んだ十数年後、大人になった元いじめっ子たちが、ハロウィンの日に次々と凄惨な暴力を加えられ殺害されていくいじめ復讐スラッシャーです。
僕の考えた最強のドラゴン/赤猫柊さん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428748671928
いじめられっ子の少年と、その友達である世界最強の竜グレイシスのお話。復讐モノとは違いますがいじめっ子たちが因果応報的に死ぬというお話です。
「グレイシスは本当にただのぬいぐるみなのか、それとも実は(ツムギくんが信じているように)強力で恐ろしいモンスターなのか」という疑問が引きになっていて、ラストまでノンストップで読めました。イマジナリーフレンドとの交流を心の支えにしていじめに耐える少年の姿は何ともつらく、心苦しいものがあります。
ラストシーンのおどろおどろしさも必見で、『それ』によってもたらされる災いの描写は真に迫るものがあります。因果応報的な死人を出すのみならず、無関係な人物をも理不尽に手にかける残虐性が恐ろしい。そこからのラストも素敵で、物悲しいながらも勇壮でした。
引金と百舌鳥/加工師さん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428747990016
殺人が日常茶飯事な殺伐とした島で殺し屋稼業をする殺人鬼のお話。殺人鬼にレッドラムとルビが降られているのはもしかしてシャイニングが元ネタでしょうか(それとも私が知らないだけで何か別のネタだったりするのかも)。
殺人鬼が主人公であるといってもスラッシャー作品とは大きく趣を異にしていて、いわゆるマフィア小説、もしくはクライム小説のような類のお話でした。想定していたのと違う類の作品で、(サメ映画でもたまにそういう作風のものがあるとはいえ)消化酵素があまりないため、申し訳ありませんが読むのが難しかったです。私がその手の作品にある程度慣れ親しんでいればまた違った感想があったのかも知れません。
骨組みはクライム小説なのですが伝奇要素もあり、よくも悪くも取り合わせが独特です。ラストに(悪い意味で)伝説となったとある映画の台詞が引用されているのですが、不覚にもそこで笑いました。
ザ・デヴァウアー/宮塚恵一さん
https://kakuyomu.jp/works/16816700428702507945
得体のしれない化け物の遺体を見つける所から始まるSFモンスターパニック小説。日本の怪獣映画的な要素もありつつ海外のモンスターパニック映画のような雰囲気もあり、「一粒で二度おいしい」という言葉が当てはまる作品でした。特にシン・ゴジラを意識した部分が各所に見られて、分かる人には小ネタにくすっと来るようになっています。
次々と姿を変えていく怪物がこの物語の主役なのですが、怪物に関して「ぬめっとしていていやらしい」ような質感描写がされていて、恐怖や嫌悪を煽る効果的な描写になっていました。成長して形態を変えていく所もシン・ゴジラやガメラ3のイリスみたいでぞわぞわっとします。
ラストの襲撃シーンも見どころで、絶望感満載です。救いのない締めくくりはまさに終末といった風で、圧倒的な災害を前にした人間の無力感をしみじみと感じさせるものでした。バッドエンドもまた一興……
「殺戮小説を収集したい」感想発表 武州人也 @hagachi-hm
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