死神先生は美化娘を乱したい。
――冷静になればなるほど、自分は被害者である。
そう確信した死神は、からだを
「ちょっと
「あっ!」
「えっ、な、なにさ……??」
彼女が突然あげた
「髪の毛がびしょ
なぜだか愛日から、ぷんこぷんこ、という不思議な効果音が聞こえ、死神は目を丸くした。少女はすっ、と死神のわきをすりぬけるように洗面所の方角に向かい、速やかに戻ってくる。その死神よりもふっくりとした小さな手には、ヘアドライヤーが握られていた。
そしてリビングの窓際に配置されたソファまで、すたすたと歩いた愛日は、ヘアドライヤーのコンセントを壁の電源タップにじゃこっ、と接続してから、死神へ向かい
「ここへかむ、です、先生。私が乾かします」
「……いや、その……はい」
ソファに座った死神の髪に、丁寧な手つきで温風を当ててゆく愛日。
細く柔らかな指が、死神の髪を優しく、優しく梳く。
響くのは、ヘアドライヤーの
そのような状況がいたたまれなくて、こそばゆくて。
死神は憎まれ口を叩いた。
「あんたさぁ、
「……ひとり、でしたよ」
「え、」
「先生は
愛日の口調から、周囲の彼女に対する風当たりの強さは
それはどこまでも穏やかな、絶望と
「だから、すきなこと、
「おれは! あんたのこと、おもちゃだって思ってるよ!!」
「はい……?」
「いいから聞く! 思い通りになんなくて、もやっとはするけど、なんかわくわくして、うずうずして、ほっとけなくて。もっと、もっと
そうして
「あんたは
その言葉に、愛日はうつむいて、そして。
「フォローしているのか
花が
「あ、あんた、笑えたの……!!?」
手を震わせながら、愛日を
「ふふふ、先生、幽霊でも見たようなお顔!」
「ちょっと、ウケすぎでしょぉ!」
ひとしきり笑ったあと、愛日はきりっ、と表情を戻した。
「大変申しわけないです落ちつきました」
死神は彼女の、あまりの切りかえの早さに、目を白黒させる。
愛日と
でもそれが、なぜだか不快には感じない。
この思いの名がなんなのか、彼はまだ知りえないけれど。
にっ、と口の
「決めた! いつかあんたのこと、おれからもっともっともーっと、乱して乱して、乱しきってやるから!!」
「ヒェ……、案件ですか、通報しても?」
「違ぁああぁう!! スマホ掲げるなし!!」
――その日が訪れるのは、当分先になりそうである。
【了】
【NL】死神先生は美化娘を乱したい。※R-15 コウサカチヅル @MEL-TUNE
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