モスステトリカ

@rabbit090

第3話 end of the world

 気が付いたら荒野だった。

 あれ、何だっけ。何が起こったのか全く分からない。でも私は今ここにいる。それだけははっきりとしている。

 

 荒み切っていた世界はついに滅びてしまった。

 人一人、個人個人、それぞれの事情ごとかき消して。誰もいなくなってしまったみたい。でもそんなの納得できない。結局モスステトリカって何だったの?

 口島太朗と軒神葉子を殺した犯人は?

 そして刑事が感じていたこの世界が荒廃した理由とは何なのか。

 疑問だけ残しこの話を終わらせてしまうのは、口惜しい。

 だから私が、萩上華天がすべて解き明かして見せようか。


 萩上華天。

 萩上華天は平凡な女子である。ただの女の子。だけど彼女は気づいていない。ずっともっと深く、おかしかったということに。

 家に帰っても両親はいなかった。そのことに何も疑問は抱かない。だってもともといなかったから。気が付けば物心があって、学校へ通っていた。だがそのことにも疑問を抱かない。だって、何も感じないから。

 もうずっとずっと、違和があることにすら気付かない。

 だが彼女は平凡な女子だ。そのことには間違いない。ただ、ただ。

 彼女はモスステトリカだから、世界が終わっても、世界がなくなっても生き続けている。


 つまりね、モスステトリカというのはそういう存在なの。

 世界が崩壊する中で生き続けることができる存在。特別な存在だから、ずっと浮足立つみたいに、目立っていた。

 多分、一連の事件の犯人は私。萩上華天だから。私の意識にはいろいろなものが混じっている。まあ、行ってみれば私じゃないということなんだけど。

 じゃあ私は何なんだろう。居ても立っても居られないこの衝動を持つ私とは一体何なんだろう。

 その答えはきっと見つからない。だって私ももう消えてしまうみたいだから。

 何で世界はなくなってしまったのか、それはもう。ある日突然消えたということなのだ。ずっと荒み切っていた理由は、その前触れなんだろうと推測する。

 じゃあ、賀沢太朗は?あの男は何だったのかって?

 あの男は、生きている。

 え?って。

 「そうだよ。僕は生きている。」賀沢太朗がつぶやく。

 「僕たちは生きている。」「みんな生きている。」

 罪を犯した人間は、みんな生きている。

 罪を犯した人間だけが生きている。それは世界の崩壊と関わっているから。世界がなくなりそうな時、生を選んだ人間はみんな罪人になったのだ。

 「私も罪人?」おどけたような不安そうな表情でモスステトリカは聞く。

 「いいや。」賀沢太朗はやさしい目つきで答える。

 「君はモスステトリカだよ。そして萩上華天。罪人ではない。」はっきりと言い切り、どうやら世界はこの後も続くらしい。

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