It is sunny.

 ふと、死のう、と思った。別に嫌なことがあったわけじゃない。いじめを苦にして自殺、なんて言葉はよく聞くけれど僕の場合はそんなことないから、なんだろう、将来への不安とか言われるのかな。そもそも誰かが話題にしてくれるなんて思ってる時点で笑える。

いいんだ。

死のうって決めたとき、心がすごく穏やかになった。だからたぶん、これが僕の一番やりたいことなんだ。心の底からの深層心理の願い。死に方なんて迷う必要はない。自殺なら飛び降りなきゃあ。学校の屋上がいい。あと五分もすれば授業も終わる。最後の授業だから、丁寧にノートをとっておこう。もしかしたら人生で最も授業に集中している時間かもしれないな。とったノートを見返す人は、もういなくなるけど。


学校の真ん中にある階段を一段一段上っていく。日差しの中を舞うほこりさえ僕を祝福しているかのように思える。スマホは置いてきた。粉々に壊れちゃったらお母さんが困るだろうから。屋上の扉を開けると、一瞬びゅっと風が吹いた。目を細めながら明るい屋上に踏み出す。そのまままっすぐ進んで屋上のへりまで。


フェンスを乗り越えるとき、制服に少し錆がつきそうで眉をしかめた。このあと自分で汚すとしてもこの汚れはなんかいやだな。見ると、別に錆なんかついてやしなかった。これで穏やかに死ねそうだ。まずはフェンスに背を預けて眼前の景色を楽しむ。見慣れた光景。遠くに富士山が見えた気がした。


屋上に向き直り、フェンスをつかんでからだをゆっくり後ろに倒す。そのまま両手を放して、落ちていく。


 きれいに晴れた空、輝く太陽がまぶしくて目を細めた。今日は、死ぬにいい天気だ。

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特別な日常 比企 新人 @hiki_arato

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