君を好きになって一日目
さてと…お話をする前に一つクイズです。
何、そんなに身構えなくてもいいよ。
僕の人間性を一言でいうとするとピッタリな言葉があります。
それはなんでしょうか?
はや…そう、屁理屈。うん、そんなに早く答えられるとは思わなかったな。
え?さっき言ってただろう?…参ったね…寄る年波には勝てないってやつかな…
自他ともに認める屁理屈人間…?うん、そうだね。本当にそう思うよ。
(…本当は非常に不服だけど…)
でもね、自分では全く屁理屈を言っているつもりはないんだよ。ほんとに、いや、ほんとに。
おっと…話がそれてしまった…
…で、何の話をしていたんだっけか…あ、そうそう僕と彼女の出会いから話さないといけないか。
確か―
僕と彼女は、高校二年の時だったかな?新学期が始まって彼女は僕の隣の席になったんだ。
その時の彼女は何というか…今思い出せば、隣の席の僕をひたすら見ている気がしたんだよなぁ…
…なんで、そんな屁理屈ばかり言うの!
By母
…そんな穿った目で物事を見ていて楽しいのか?
By父
…ずれているというか、屁理屈ばかり言ってて一緒にいて楽しくない
By勝手に告白してきて、勝手に振ってきたなぜ付き合ったのかすらわからない元恋人
今日も僕は自分には到底理解し難い人種の、僕に思いっきり投げつけられた言葉を頭の中で昼休みに1人、反芻させていた。
そんな1人の世界に浸っていた僕のことを、自惚れでなければ横からずっと見ているであろう奴がいる。
まぁいい。いいよ。別に。僕が気にしなければいいんだから。
そんな諦めの念をも感じ始めていた僕に思わぬ横槍が入ってきた。
「君、怒ってるの?」
おもむろに隣の席の彼女は僕に尋ねてきた。
「…別に?」
僕は一言、最大限平静を装って答える。
別に怒ってなんかいない。決して。
暗号の解読みたいなものだ。理解し難い言葉の羅列を少しずつ自分のわかりやすい言語に落とし込んでただけだ。
決して怒ってなんかいない。
そもそも怒ると言う感情は他の誰か、もしは自分の内在的な…etc(長いので以下省略、ごめんよ。)
そして、解読を邪魔する槍投げ名人は、早く暗号の解読に取り掛かりたい僕の横腹にさらに槍を笑顔で投げ込んでくる。
「なら良かった!私、佐藤美織!よろしくね。」
「よろしく…清水実って言います。」
俯き加減に僕は答える。彼女の顔を見ずに綺麗に磨かれた机にほんのり映る僕の顔しか僕には見えていない。
彼女からすれば形式的なあいさつに過ぎないのに…佐藤とか言う女子が投げ込んできた横槍のせいでもう滅茶苦茶だ。解読どころではない。
でも、なぜだろうか。少し救われた気がした。僕に投げかけられた暗号たちは決して僕を肯定するものではない、と言うことだけは理解できていたからだ。
とゆうか、むしろ否定していたのではないかと思う。
もし、僕を否定する言葉たちを僕の中に理解できる形で完璧に落とし込んでしまったら…もういい。暗号解読はやめだ。
なんなんだこの僕とは正反対であろう人種は…なんで話しかけてくるんだよ…
でも…少しだけ、笑ってるであろう槍投げ職人こと、佐藤の顔をしっかり見ておけばよかったと思った。
–それにしてもひどいなぁ。もう少し何か言いようはなかったのかな。あの時の実君。まぁ、僕なんだけどさ。
君みたいな女子と話せて緊張してるんだよ、ニコ!とかさぁ…
ほんとにあの頃の僕はため息しか出ないよ。
今ならもう少し愛嬌のある言い方ができたはずなのに。
…まぁ後悔先に立たずだ。それすらもいい思い出だよ。
え、あ…ヘタレ?
でもね?少し言い訳をさせてもらうとね?
何とも言えなかったんだ。こう…今思うと、初めての感覚でね。ありきたりな表現だけど胸をしめつけられたんだ。こう、キューって。
彼女の何とも言えない、あのクシャッとした笑顔に高校生の実君はもう、やられてしまったんだと思う。
え?うん、そう、これが僕が同級生の佐藤さんに恋に落ちた理由。
少しチョロすぎやしないかって?
確かに僕もそう思う。大いに思う。
だけどね…この年になって思うのは恋なんてものは意外とそんなもんなのじゃないかと僕は思うんだ。
それこそ、夕立みたいなものだよ。
何にもない所にいきなり降り始める、突発的なもの。
だから、夕暮れの空に彼女はいきなり雨を降らせたんだ。
それは僕の乾いた土を潤すのには十分すぎるほどの雨だったんだよ。
…そんな目で見るなよ。昔はポエムを描くのが趣味だったんだよ…
僕が正反対の彼女を好きになった理由 @tamatebako1122
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