22「王都へ」

「お前たちはワシと王都へ行ってもらう」

「「!!」」

「わかったか?」

「「は、はい」」


 タヌキ親父はパスタという新しい料理自体には特別な反応がなかった。これは絶対に俺のユニークスキルに関することだろう。王都に行くことになったのは侯爵家に連れてこられて四か月目のことだった。


「フドぉ~」

「お前は甘えん坊だなぁ」


 アンは最近抱きついて甘えてくる、貴族の家で働くことは大きなストレスなのだろう。こいつは子供っぽいところがあるからそれが恋愛感情とは思えない。ところでアンは結構胸がデカい。俺も男だ、我慢するのが大変だった。いつものように耳と一緒に頭を撫でてやった。落ち着いたら離れる感じで本当になにもない。

 王都までは馬車三台で向かう。この大人数での旅は流石侯爵だ。旅路では俺の能力と料理の腕は大活躍だった。


「いいかお前たち、儂が頭を上げてよいというまで決して上げるな」

「「はい」」


 タヌキ親父とは旅の間、何度か話をする機会があったが距離は縮まっていない。貴族ってやつは平民とは馴れ合わない存在ということだ。


「ヴィリエナ侯爵」

「ご無沙汰しております。陛下」


 綺麗な服に着替えてから、王城らしき建物に入り、幾人もの衛兵とすれ違い、何度も持ち物検査を受けようやく一つの部屋にたどり着いた。陛下とタヌキ親父が呼ぶその人物は幼い女の子のように見えた。もっともタヌキ親父が手で待機の合図をした後はお辞儀をしたままの姿勢になっていたから見間違えかもしれない。

 貴族の挨拶は長い、タヌキの達者なしゃべりのせいでそれが更に長くなってマジで辛い。


「相変わらずだな侯爵は」

「貴族としての性ですので」

「堅苦しいのはこのくらいにしておこう」

「はっ。顔を上げていいぞ」


 ゆっくりと俺たちは顔を上げる。やはり見間違えじゃない。王様は幼女だ。


「おい、平民。わらわの顔がそんなにも珍しいか?」

「い、いえ。そんなことは……」

「くくくっ」


 ものすごい権力者が意味深に笑うだけで怖いんだが。逆鱗に触れてないよな?


「わらわの歳、いくつだと思う?」

「えっ……」


 タヌキ親父を見つめ助け舟を求める。


「思った通りに答えるがよい。陛下がよくする質問だ」

「……十歳です」

「そちらの義足の娘は?」

「九歳……です」

「なるほどのぉ~」


 幼女王はニヤニヤしながら答えを言う。


「わらわの歳は百二十四歳じゃ」

「「えっ!!?」」

「カカカっ。やはりなにも知らない平民の反応は楽しいのぉ~」


 どうやらご機嫌なのだが、その冗談みたいな年齢ってガチなの?ワンチャンドッキリかもと思っていたのは俺だけのようだった。


「王様が長命種ってホントだったんだ……」


 アンはポツリと聞きなれない言葉をつぶやいた。長命種とは?文字通り長い寿命の種族ではないのか?


「ところで男の方がユニークスキルの持ち主でいいのかの?」

「そのとおりでございます」

「おい、スキルを使ってみよ」


 事前に能力を使うことも打ち合わせていた。タヌキ親父に目配せし、幼女王から離れたところに屋台を出す。流石王様の使う部屋、多少圧迫感があるが屋台は楽々部屋に収まった。


「おお、これが……」


 見上げるように幼女王が俺の屋台を見上げた。

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