17「魚市場」
「起きろっ!」
「勘弁してくれなのにゃ……」
『にゃ』を付けるシーンじゃねーよ。
「……」
「ぴゃっ!!?尻尾はダメにゃ!!えっちーっ!!」
だってな、ベットからネコ尻尾がぴょこんと出てたら撫でるだろ?
異性の獣人の尻尾はお尻と同じとものすごい怒られた。同じ部屋に泊まってるんだから覚悟しとけと言ってあるんだがなぁ……
「魚市場、楽しみだなっ」
「なんでそんなに元気なの……」
「料理人の朝は早いんだぞ」
「あたしは料理人じゃないにゃあ……」
時々『にゃ』を使うようになってきてるな。アンは役に立ちそうにないので宿に帰した。
「こっ、これは……」
煮干しに魚油、そして魚醬。俺が泣いて喜ぶ品々が大量に揃えられていた。
「あの、すまん。この魚醬ってどんな料理に使うんだ?」
「ああ、珍しいか?俺らこの辺の人間は魚醬をいろんな料理に使うんだわ。よその人間には臭くてたまらないそうだがぁな」
「いや、魚醬は素晴らしいと思うぞ」
「おっ、兄ちゃんもそう思うかぁ」
店のおっちゃんはノリノリで色々話してくれた。試しに色々と買いたいと言ったら試食をさせてもらうことになった。品質ヨシ。煮干し、魚油、魚醬の他にも色々と買いこんだ。それとおっちゃんに魚屋も紹介してもらった。こういう市場では人の繋がりというものはバカにできない。
「戻ったぞー」
「あっ、おかえり~」
二度寝のおかげかアンはすっかり元気そうだった。よく考えたら魚市場は足元が濡れてるしアンを連れてくのはよそうと思う。
「よしっ、朝メシも兼ねて早速試作するぞ」
「ご飯食べれるの~?」
「たっぷり寝たろ?手伝え」
「えっ~?」
「食いたければ働け」
「しょうがないなー」
今回はパスタを作ろうと思う。俺が軟禁されていたタランコンの街でも流行っているらしいし、この街の店ならパスタを取り入れるところもすぐに出ることだろう。せっかく魚油があるからツナおろしパスタから油そばっぽいもののイメージで幅広くいろいろ試してみたい。
「アンにはパスタを打ってもらう。大変だがこれができれば食うには困らないだろう」
「お~そんな重要そうな役割をいきなり?」
「重要だな」
「ところでパスタってなに?」
「作って食べてからのお楽しみだな」
俺は具を作り始めた。この街にはいろいろな食材が出回っている。港町という交通の要所なことが大きな要因だろう。おかげで良質な小麦粉を適正価格で手に入れることができた。新鮮な野菜も豊富だった。カイワレダイコンのような絡みのあるイワレコという野菜もあった。
「甘辛く角煮にした魚をほぐして汁と一緒に、イワレコも混ぜるっと。パスタの方も打ち終わったな」
「はひぃ~」
「お疲れ。お楽しみの時間だ。パスタが茹で終わったらあっという間だぞ」
「たのしみ~」
「パスタを茹でる仕事はお前の仕事になるんだ。茹で加減を含めて今から覚えるんだ」
「ふえええええええええ!??」
今回はパスタを茹で上げた後火を通さない。ちょうどの茹で加減を覚えてもらう。タイマーがあればいいのだけどそんなものはない。文字通り茹で加減と体感時間で判断してもらう。
「よし、一本食べてみろ」
「うん」
「どうだ?」
「おいしい、のかな?」
「これであと20秒くらいだ」
「そんなにきちんとしないといけないの!?」
「細い麺は時間がシビアだからな」
今日は練習だし俺が湯切りをし、空の鍋で魚油と混ぜた。
「どんぶりにパスタと具を盛りつけて……完成だ」
「お~これがパスタっ!」
「油そばに近いがな」
「食べていい?」
「よく混ぜるんだぞ」
「んっ。ちゅるちゅるするの楽しいっ!食べたことない感じ!」
「狙い通りイワレコが甘辛い味付けと相性がよかったな」
「すっごい!フドーって天才なの!?」
「天才かもな」
ただの現代知識チートだがな。
「おかわりを食べるのはちょっと待て、試したいことがある」
「ん?」
「トッピング。まずは海苔だ」
「黒いよ?コレ食べれるの?」
「パリパリしてて癖がないぞ」
なんと海苔があった。あまり数は無かったがキッチンばさみで細切りにしたの試す。
「ホントだぁー。パリパリしてていい匂いなのに味がほとんどしな~い」
「次はゴーメだ」
ゴマっぽいもんもあった。試しに炒ってみたらまんまゴマだった。
「香ばしい。プチプチ噛みつぶしても嫌な感じじゃなーい」
「両方合わせても問題なさそうか?」
「問題なーい」
次はネギっぽいものを細かく刻んだものをトッピングした。これは辛みが強くなり過ぎで嫌いと言われた。とりあえずこれで一品完成。明日からは屋台で商売ができるな。
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