6「ステータス」

『ステータス』


 最初そう言ったときは冗談半分だった。だけど目の前にゲーム画面のようなものが出た時には驚いた。今はこう書かれている。




タカシ レベル2


6400  /  11000


ラーメン屋台召喚

さしすせそ レベル1






 昨日まではレベル1だった。それがレベル2に上がってた。どうやら料理を食べてもらうか満足させるとレベルは上がるようだ。

 ここで注目したいのが昨日まではなかったスキルだ。さしすせそ、これはもしかしたら砂糖のことではないか?次は塩、レベルが上がれば醤油も手に入りそうだ。


「砂糖を100グラムくれ」


 ラーメンのどんぶりに砂糖が盛られていた。舐めてみるとやはり砂糖だった。


「これは悪魔的にヤバイもん手に入れたんじゃね?」


 甘いものは時代によっては超がつく高級品と聞いたことがある。調子に乗ってスイーツ作りなんてしたら命が危ないんじゃないか?そんなことを思った。


「完成だ」


 昨日一日協会と市場を見回った結果。重大なことが分かった。それは小麦がないということだ。代わりに燕麦のような粉にしてもボソボソしたパンになる麦がこの辺りで流通している。一方良い意味で計算外なこともあった。それは魔物の卵っぽいものがあったことだ。正確には卵ではないのだが料理に使える分には問題がない。


「ふわっふわぁ~」


 おっさんと黒狼の一同に出したのはパンケーキ。今までほとんど目立たなかったマムルは乙女の眼差しでパンケーキ作りを見つめていた。それを微笑ましく見つめる黒狼のメンバー。おいおい、いい仲間たちじゃねーか!


「ふんっ。こんなパンモドキでワシを満足させられるのか?」

「確かに香りは香ばしいが弱いしな。食ってみんとわからんな」

「とにかく食べてみよう」

「「「……」」」

「優しい味……」


 マムルが涙をこぼしている。メアは彼女を優しく抱きかかえた。微笑ましい雰囲気の中おっさんがケチをつける。


「ふんっ、こんなもんで満足すると思ってるのか?」


 若干強がっている気がするが計算通りだ。


「これをかけてもまだそんなことが言えるかな?」

「これは……!?」


 おっさんのために用意した昨日のワイン煮込みの残りを手持ちの調味料でアレンジしたものだ。それにはコショウも使われている。


「パンケーキのクセがない味はワイン煮込みの味を引き立たせる。大した味じゃないなら一口食べて文句を言えばいいんだぜ?」

「ぐぅ……」

「文句があるなら素直に次の料理を用意するわ」

「くっ、くそっ!!」


 どうやら食べたら認めてしまうことを察してしまっているようだ。手を付けた途端、すごい勢いで掻き込み皿まで舐めつくした。おっさんはちから尽きたようにうなだれていた。


「すげーなタカシは」

「なかなかの一品だったろ?」

「それもあるけどケトルのおっさんをここまで手玉に取るなんてなかなかできるヤツはいない。それに協会の職員からもよく声を掛けられるしな」

「食いしん坊に優しいのが料理人だからな」

「ぷはっ。面白いことを言う」


 ノアは特に俺に興味があるようだ。そういえば俺が持っている道具や服を熱心に見てたんだよな。最近は話しかけられることも多い。こいつには特に助けてもらうことも多くて悪い感じはしないんだよな。


 不思議といえば俺の屋台は召喚できるようになっていた。文字通り自由に出し入れができる。ガスと水道と提灯の電気は俺のステータスにあるポイントを消費することで使うことができる。そのポイントを使って砂糖も出した。ガスで10分100ポイント、水道は300ポイントだった。そして砂糖は100グラムで1000ポイントとかなりコストが高かった。

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