スープカレー

白川津 中々

■ ※誤表記やばかったので改稿

酒がなくなると不安になる。

アルコール依存ではないかという不安をグッと呑み込み夕食作り。今夜はスープカレー。あまり馴染みのない料理だ。



差し当たって気乗りはしなかった。しかし、良人が是非とも食べたいというので取り掛かる。まずは買い物から。近くのスーパーへ赴き必要な具材を物色。人参、玉葱、南瓜、ピーマンをカゴに入れ順調な滑り出し。誘導線に従い生肉コーナーへ移動。後は手羽元があれば完了である。造作もない。


が、ない。

手羽元がない。

ないのだ。手羽元が。


隅から隅まで確認し、鮮魚コーナーまで足を運んでも見つからない。まさかのノー手羽元。オーマイブッダ。夕食メニューを変更せねばならぬかと頭を抱える。


だが、献立を容易に変えるというのは避けたいところ。舌も胃もスープカレーで準備を進めているし、カゴに入れた食材を戻すのも億劫。そのままシチューあたりにシフトする事もできるが、要望を叶えるは炊事担当の務め。できるならばスープカレーを作ってやりたい。しかしどうすれば……


苦しく悩み再び生肉コーナー。つぶさに確認し、はじに追いやられている手羽先を見つけ、閃く。そうだ、手羽先だ。部位は違うが手羽元と同じく骨付き。であれば似た要素を持とう。これを使いスープカレーを作るのだ。スパイス&エスニックなスープカレーカレーを作るのだ!


手羽元をカゴに入れ即様にレジカウンターへ。商品を購入し、帰宅。手羽先を焼き、南瓜を焼き、後は野菜を切って煮詰め、待つ。ひたすら待つ。





そして今、まさしく煮詰まり待ちの最中である。

フランベに使った酒のあまりを飲んでいたが、干してしまった。待ち時間を持て余す。あぁ暇だ。酒が飲みたい。酒が飲みたい。酒をが飲みたい。しかし、今から買いにくというのも間抜けな話。とっくに部屋着だし、それに……




「楽しみだね。スープカレー」


「うん」





良人を置いて酒を買いにいくなど、なんだか情けない気持ちがして、気が乗らなかった。空になった瓶を見ると、喉から手が出そうなほど酔いに対する執着を覚えるが、それでも、俺はスープカレーが煮詰まるを待つ。そうだ。俺はスープカレーを煮るのだ。酒など飲んでいる場合ではない。ただ、煮る。ただただ、煮る。それだけで、それこそが、料理なのだ。


願はくば、美味しくできていますようにと、信じてもいない神に一人祈る。酒はなくとも、ほろ酔いで……

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