第9話 プロローグ

 全てに合点がいった真希は、由衣に問題の化石を渡した。車で送るからと席を立とうとした由衣に、真希は口を尖らせて抗議した。

「まだすべての質問に答えてもらってないんですけど」

「あらっ、そうだったかしら」

「そうですよ、ずるいなまったく大人は。父とはどんな関係なんですか?」

「何の関係もないわよ。ああ、あの写真ね。あれはコラージュ、合成ね。大学から借りた写真に私の顔を合成したの。よくできてたでしょう。今では動画でもできるんですってね。そんなことが簡単にできる世の中って、怖いわよね」

 女子高生の純真な心を散々弄んだくせに、良くもまあそんなことをぬけぬけと言えたものだと、真希は心の中で憤慨した。そして少し怒気を含んだ声で更に質問した。

「それともう一つ」

「まだあるの」

「最初の自己紹介の時に、三十歳とおっしゃってましたが、本当は幾つなんですか」

「ええ~、そんなこと聞く? ちょっと許して、ね、ケーキ奢るから、ね」

「いいえ、許しません。私についた嘘は全て白状してもらいます」

「アイスもつけるからさ、それで勘弁して」

 拝み倒して許しを請う由衣の背中に、傾きかけた夕日が当たっていた。

                                   (了)

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プライスレス ストーン いちはじめ @sub707inblue

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