第3話 63歳の勇者?vsゴブリン


 では早速この魔法の剣の力を使ってみるとするか。

 

「ぬぉぉお!火炎斬り!」

『シュッ』

「何やってんのよ」


 俺が渾身の力で振った剣はイメージした炎を出すことなく空を切った。


「おいなんで火が出ないんだよ」

「そりゃそうでしょ、魔力もなにも込めてないんだから」


 え、魔法の剣って振ったら火が出るととかじゃないのかよ。

 つか魔力ってなんだ?


「魔力?」

「え、魔力も知らないの嘘でしょ」

「仕方ないだろ!魔法とか今まで一度も習ってこなかったんだから」

「もうなんでもいいや、軽く教えてあげるわ」

「助かる」


 そう言ってヤヨイは俺の胸へ指を押し当てた。


「ここ、ここに魔力があるの」

「胸にあるのか?」

「そう、胸っていうか心臓かな、そこに魔力があってそこから指先へ広げるイメージをして魔力を放出するの」

「なるほど」


 まずは胸の魔力を感じて、それを指先へ広げる。

 よしやってみるか。


「ハァァァア」

「お、なんだかそれっぽい」

「うぉりゃぁぁあ!」

『シュッ』


 また不発だった。


「なぜだー!」

「そりゃ一朝一夕でできるもんじやないからね」

「くっそぉ」


 でも魔力か、面白いな。

 63年間生きてきてまったく知らなかったことがここにきて沢山わかった。

 まだまだ俺も成長できる気がしてちょっとワクワクしてきたな。

 よぉしこれから頑張るぞ!


「うぎゃああ!」

「げっゴブリン!」


 そんなこんなでヤヨイと山を降りていると茂みから何やら錆びた刀を持った緑色の怪物が現れた。


「なんだこいつ」

「え、嘘でしょゴブリンも知らないの」

「ああ知らんな」

「あんたそれでよく勇者になるとか言えたわね」「うるさい!どうでもいいだろ、それよりこいつ敵なのか?」

「ええそうよ」


 敵?こいつがか。

 身長は150センチも満たないこの小さな獣が敵。

 意味がわからん、こんなの力で押し切れそうだが。


「うぎゃああ!!」

「うわぁ」


 ゴブリンは奇声を上げながら斬りかかってきたが、そんなに早くなかったのでひょいっと避けられた。


「何してんのよ、早く倒しなさい!」

「え、どうやって?」

「その聖剣を使ってよ!」

「あ、そっか」


 そうだよさっきは火の魔法とかは使えなかったけど、一応聖剣だって剣なわけだし切ることくらいはできるもんな。

 よしやってやらぁ。

 そうして俺は聖剣を抜き、ゴブリンの攻撃に合わせてカウンターを撃つ構えをした。


「うぎゃああ!」


 構えてる俺に向かってゴブリンがまた斬りかかってきた。

 よしここだ!


「ぬぉぉぁお!聖剣パワー!」

『ズバッ』

「え?」


 ゴブリンの腹を斬ったつもりが勢い余って、というか聖剣から何か魔力のようなものが放たられたため、ゴブリンどころか後の木数本ごと斬り倒してしまった。


「す、すげぇ」

「な、なによ今の」


 今の技はヤヨイも見たことがなかったらしく、驚いていた。


「なんだお前も聖剣の技をみるのは初めてなのか?」

「いや違くて、あんた魔力使えんてんじゃん」

「あ、ほんとだ」




 




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魔剣を探して45年!?やっとの思いで見つけたのが聖剣だった件について。 神崎あら @takemitsu

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