第2話 誕生!63歳の勇者


「な、なんだったんだ」


 それから程なくして俺はこの不思議な霧から解放された。

 突然濃くなった霧に包まれ呼吸がしにくくなったかと思えば、いきなり霧が晴れるなんて一体何だったんだろうか。


「あ、貴方さっきの老人なの?」


 声のする方を見ると先程の守り人?とかいうヤヨイがこちらを目を大きくして見ていた。

 しかし、人から老人なのと聞かれるとなんだか嫌な気持ちになるな。

 あってはいるんだが、その言い方はちょっと失礼なんじゃないか。

 他にもっと、さっきのおじいさん?とかもっとやんわりとした聞き方あったんじゃないか。


「あ、ああそうだよ老人だよ」

「う、嘘でしょ貴方だいぶ若返ってるわよ」

「え?」


 若返ってるだと、なんだよそれ。

 老人とか言って失礼だったから若いですねぇとか言えば許されると思ってるのか。

 いや今、若いですねではなく若返ってると言ったか。 

 それってどういう……え、なんだよこれ。

 不意に自分の手を見るといつもみているしわくちゃの手ではなく、若くて瑞々しい手があった。


「まさか主人以外の命を奪う剣が、主人には命を与えるとはね、恐れ入ったわ」


 どど、どうなっているんだ。

 さっきまで、ほんの5分ほど前はもっとよれよれのしわくちゃの手だったのに。 

 というか、心なしか身体が軽いぞ。

 それに力が漲っている感じがする。


「い、一体俺どうなってるんだ」

「よかったら鏡を貸しましょうか?」

「え、あ、ああ貸してくれるとありがたい」


 俺がそういうとヤヨイはポッケから小さい鏡を出して、俺にそれを渡した。

 と、とりあえず顔を見てみよう。


「な、なんだこりゃ」


 自分で言うのもなんだがもらった鏡に映ってるのはいつものおじいさん顔ではなく、若い頃の自分だった。

 いや、若い頃の顔はしてるけど髪色は白でちょっと違ってはいるか。


「凄いわね、それ多分その剣の力よ」


 ヤヨイは自分の顔を見て困惑する俺の持つ剣を指差しそう言った。

 こ、この剣の力か……。

 さすがは魔剣だな、こんなの人智を超えた力まさに神の力に近いな。

 

「お、恐るべし魔剣の力だな……」

「ねぇ貴方、さっきも言ってたけどそれ魔剣じゃないわよ」

「は?」


 魔剣じゃないだと、そんなわけあるかこんな力まず普通の剣にはない。

 こんな力を持つのは魔剣か、あとは聖剣くらい……も、もしかしてこれは。


「それはね聖剣よ、聖剣」

「う、嘘だろ」

「嘘だろってなんで落ち込んでんのよ」


 せ、聖剣だと。

 魔剣は魔力を帯びた魔法の剣だ。

 故に魔法が使えない俺でも魔法を使えるようになる。 

 だから魔剣が欲しかったんだ、俺も魔術師みたいな魔法が使いたかったのに……それが聖剣だなんて、聖剣なんてただの切れ味の良い剣だろ。

 いや待てよ、こんな力があるんだこれはひょっとして魔剣なのでは。


「なんで落ち込んでんのかわかんないけど、その剣はね昔とある有名な魔術師7人が命を犠牲にして作った魔法の剣なの、だからね貴方そんな凄い剣に選ばれたんだからもっと喜んだりとか……」

「なに!これは魔法の剣なのか!」

「そ、そうよさっきからそう言ってるじゃない」


 や、やったぞこれで俺は、魔法が使えるようになる。

 そうすれば俺は勇者になれるぞ!

 



 


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