魔剣を探して45年!?やっとの思いで見つけたのが聖剣だった件について。
神崎あら
第1話 魔剣かと思ったら聖剣でした
とある辺境の謎の暗い洞窟の奥の奥にそれはあった。
「お、おおこれがもしや魔剣か……」
なんと禍々しいオーラなんだろうか、ただの剣ではないのが見るだけでわかる。
儂の名前はユウジン、勇者になりたくて45年前に村を出てそこからずっと魔剣を探し続けた者だ。
この45年間、どんなに辛い困難も魔剣のためと思い耐え抜いてきた。
その苦労45年分が今報われようとしている。
長かったのぉ、これでやっと儂は勇者になれる。
「お待ちなさい、そこの老人」
「……あ、あんたは?」
「私はその剣の守り人ヤヨイです」
だ、誰じゃあこの娘は。
守り人とか言っておったのぉ、ここにきてよもやこんな小娘に邪魔されるというのか。
しかし今の儂ではこんな小娘すらも倒す事は叶わんだろうな……。
ああ、なんて苦労の多い人生だったんだろうか、まぁよいこの際魔剣を見る事ができたのじゃそれで良しとしよう。
「そうですか守り人様ですか、すいませんねこんな老人が剣を奪おうとして、でもどうか許して頂きたい、なんせ苦節45年の苦労人でして」
「……いや、別に私は貴方がその剣を奪おうとするのを止めに入ったのではありません、ただその剣は主人を選びます」
「主人を?」
なんじゃ魔剣とはただ所持するだけではダメなのか、なんと剣が人を選ぶとは。
いやはやそれでは儂はこの剣を手に取ることすら許されんのだな。
「ええ、もしも主人に選ばれたのならその者は世界に平穏をもたらし、そしてあらゆる魔を薙ぎ倒す力を得ると言われています」
「な、なんと」
凄いのぉ、この剣に選ばれればまさしく勇者になれるというわけか。
ふっ、儂がもっと若ければ可能性も一欠片ほどあっやもしれんな。
「しかし、主人に選ばれなければその剣は手に取った者の命を吸い取ると言われております」
「ほぉ」
なるほどこの子はつまり儂を助けるために教えてくれたのじゃな。
なんとまぁ優しい子なのだろうか。
しかし選ばれなければ命を吸い取るか、これはもしや試してみる価値アリやもしれんな。
「お嬢さんや、儂の命はもう時期終わるが故剣を手に取ってみても良いかね?」
「え、話を聞いていなかったの?老いぼれた貴方がその剣に触れれば間違いなく命はないですよ」
「ああ知っとる」
お嬢さん心配してくれてありがとう、でももうどうせ亡くなる命、どうせならこの魔剣に吸わせてこれからはこの魔剣の一部として世界を見るのも良いかなと思ってな。
だから試させてくれ。
「ではなぜ貴方はそれでも試そうとするのですか」
「はは、一度でいいから魔剣を振ってみたい、それが夢だからじゃよ」
「そ、そうですか……魔剣?」
さぁて、魔剣や儂の63年分の命お主にくれてやるやるかのぉ。
儂はそうしてその剣を持ち上げた。
「ぬ、ぬぉぉぉお」
お、重い、純粋にこの剣重すぎる。
老人にはきつい重さじゃ、それでも儂はこの剣を一回で良いから振り抜いてみたいんじゃ!
儂はそう思い剣の柄を持ち、その剣を鞘から引き抜いた。
「な、なんじゃ」
鞘から引き抜くと同時に、白い霧のようなものが儂を覆った。
なるほどこれで命が吸われるのじゃな。
はぁ、なんとも長くて儚い人生だったのぉ。
『汝、我の主人として我と共に生きていく覚悟はあるか?』
な、なんじゃ頭の中で声がするぞ。
共に生きていくだと、この45年間ずっと一人であった儂と。
そんなの共に生きていきたいに決まっておる、だって一人でいるよりか誰かと一緒にいるほうが幸せである事を、ずっと一人だった儂にはわかるからのぉ。
ん?というかこの声の主は誰なんじゃ。
女性のような声じゃったが。
「う、嘘でしょ、あんな老人が選ばれるなんて……」
『その覚悟確認いたしました、そして私は汝の覚悟を受け入れ、汝を主人とする事をここに宣言します』
え、主人?
だからお主こそ誰なんじゃ。
……ってなんじゃ、なんか儂を取り巻く霧がどんどん濃くなっている。
しかも身体に入ってきておる。
く、苦しい誰か、誰か助けてくれー。
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