今日見た夢の話


 昼休み、おもちゃのような一メートル弱のジッパーがついた人形型の袋を好奇心で開けてしまった。

 それは催淫剤だった。

 性的欲求を抑えられずクラス大混乱。

 男子も女子も関係なく突然の性の快楽に興奮どころか恐怖に震える。

 空気を吸うなと叫ぶが間に合わず。

 理性が残っている私は男女に分かれろとクラスを変えた。

 うずく体に悶え、呼吸は喘ぎに変わる。何故か涎が止まらず服で口元を押さえるがもはや意味がない。溢れる涎は袖を侵食し床にぱたぱたと落ちる。

 何とか頭を回転させて、窓を開けて空気の入れ替え方法に気づく。

 クラスの無線電話で「窓を開けて外の空気を取り入れろ!」と叫びながら四組に告げた。

 構内はゾンビパニック状態で外へ脱出を試みるも興奮状態の男子生徒に阻止され思わず屋上へ。

 すると催淫剤の効果は消えて全員正気に戻る。

 しかしここから性の恐怖ではなく、別の恐怖が体を震わせた。

 突如として現れる四メートルは超えてるであろうペコちゃんキャンディーの人形らしきものが襲いかかってくる。

 その人形を止めるには、屋上にある複数のベンチの下にある鍵穴を解除するしかないという。

 私の親友であろう男子生徒がそう叫んだ。

 しかし複数あるベンチの下を一つ一つ確かめる時間はない。鍵を持っているのは何故か私。恐怖と緊張でつい親友の男子生徒に「どこに鍵穴があるんだ」と叫びながら、追いかけてくる巨大な人形から逃げている。

 親友の男子生徒は必死に思考を巡らせているのか返事が吃っていた。そして「右側の三番目」と叫び私はその場所のベンチの下の鍵穴に鍵を差し込み左に回した。

 すると人形はキュルルルと音を立てやがて動かなくなった。

 恐怖と緊張の糸がようやく途切れた。

 この惨状を警察に報告する為に電話がある一階に戻る。

 そこに居たのはどんぐりのような体型をした同い年か、それよりも年下の男子がいた。

 どうやらこの惨状を招いたと口にした。

 私は理性を捨てて原因の本人をバトル漫画のように蹴り飛ばした。「お前のせいで全員がどんな目にあったか分かっているのか」と詰め寄りまた蹴り倒す。周りに止められようやく我に帰り暴行をやめた。

 晴らし足りない鬱憤を抑えながら、職員室へ行き電話の外線ボタンを押し警察に通報しようとする。

 しかし数字のボタンの配列がでたらめで、おまけに一回ボタンを押すとまた狂う。

 まともに「110」と押せずに発狂したい気持ちを抑えてなんとか通報に成功した。

 しかし一階にはまだ催淫ガスが抜けていない生徒もいた。

 私含め仲のいい五人くらいのグループがあり、その中の男子は女子を襲わず必死に理性を保ちクラス内に留まっていた。それに私は感動して思わず涙腺が緩んだ。

 しばらくして警察は到着。警官は念のため校舎には入らず外から私に指示を出す。

 すっかり催淫剤が抜けきっている私はクラスのドアを開けて、校舎にいる全員に「催淫剤が抜けていない生徒は警察によって無事に理性を取り戻しているので安心してください。しかしそこから動かず待機する事」となるべく大きな声で、冷静に告げた。


 事態は無事に解決した。

 そして私はようやくこれが夢だと気付いた。

 夢なら早く覚めてほしい。覚醒しようとした瞬間、時が止まったように周りはピクリとも動かなくなった。

 隣の女子から「気付いてしまった?でももう遅い」と口だけ動かし脳に直接響く。

 私はいつものように自分のタイミングで覚醒しようと何度も試みた。できなかった。

 他の生徒の口から「だから無理だって。夢から覚めることは出来ない」と隣の女子生徒と同様声が響く。

 普段寝ているマットレスの色、感触を思い出し同じように掛け布団の色と、自分がどのような体制で寝てるのか思考を巡らせ、五感を感じたその瞬間カッと目を見開いた。

 夢で探った体勢で覚醒し、体は汗をかいていた。

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今日見た夢の話 冬雪乃 @fhuyuno

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