少女の悪魔
「眠らないで」
姫に声をかける
少女はキスで起きるのだろうか
真っ赤に熟れた林檎を齧った少女は喉に詰まらせてはいないだろうか
「お願い、連れてって」
すぅすぅと時折聞こえる以外に返事はない
幸せそうな寝息に茶々を入れることなんて自分には出来ず、唯その音一つ聞き漏らさないように耳を傾ける
少しでも向きが変わったら聞こえなくなってしまうから、零さないように落とさないように
こくりと喉が鳴って、ずびっと鼻をすすって
たまにしか聞こえない床ずれの音は出来れば聞きたくない
少女はよく言う
「私はそんなに考えられないから」
少女の身体はこの世界にはしばし合わなかったようだ
考えるのが難しい?
少女の中にはどんな考えがこんがらがっているのか、少女が考え続けるのも億劫な何が
「ねえ"少女"。君は何から逃げているの?」
悪魔が今日も君の夜を飲み込んだ
怖い恐い夜
夜目が聞かない自分たちは恐怖と引き換えに夢を売った
おいしそうに夜の獣はパクリと君を食べた
「返して、僕の」
少女についた獣はいつだって腹ペコで、夜じゃなくたって少女を食べてしまう
今たった今少女の転がる声に耳を傾けていたところなのに
ちょうど今少女のことを自分は本当に好きなのだと言い聞かせて幸福感に浸っている所だったのに
「返してよ、僕のだよ、なんで、どうして」
それなら自分も食べられてしまえばいいのに
温かな酸に二人で一緒に溶けちゃえばいいのに
そうしたら自分も少女も何も考えずに寝ていられる
そうだそれがいい
でも心はどうして置いてけぼりで、理解しようと頑張ったって一人ぽっち夜に取り残された事実は揺らぐことがなかった
そっと自ら耳を塞いだ
青くなくちゃいけない Ley @Ley0421
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