彼女の悩み


少女の声は聞こえている

耳を塞いで頭を抱えて布団を被っても聞こえてくる冷たい声に混じって届いていた


自ら布団を被ったのに息苦しくなったから少し開けた隙間から細く細く息をした

暑くて鬱陶しくて狭い

暗くて孤独でこんなにも生きている

過去に囚われ、なんていい言葉だ

どんな人間も過去があって今を生きてる、当然、自分も


沈むようなアイと呼ばれる自己の押しつけに呆気なく潰れて、小さな喉は殺された

歯車になれない自分はどんな形をしているのだろうか

茹だるようなここは妙に苦しかった


自分で自分のことを見る

鏡の中の自分は随分とやつれているようにも溌剌としてるようにも見えた

モヤが掛かった自分のことを分かっているようで何も分かっていないことを自分は切に知っている

鏡を擦って綺麗にしようとしても残ったのは傷だけだった

モヤも直ぐに戻ってきて、これが無意味なことを知ったのはつい最近の話


煙の充満した薄暗いここで這うように自分を探して、ヒトに、期待して、救われることを願って

勝手に傷ついた


言葉なんてどうせ幻だ

どんなに上手く取り繕ったって形骸した言葉に意味なんて

そう何度も何度も声に出して文字に起こしてきたのになんでまた自分はこうやって望むのか

あの日とあの頃と何が違う?


ああ、でも自分がここにおこしている言葉を私に向けてと、泣きながら言ってきたのは少女が初めてかもしれない


ひとつだけ薄暗くなっていないそのアプリを閉じる

ひとつだけ許された自分の行動


自分は信じたいのか、信じたくないのか

こうやって理由をつけたいのか、はたまた本気でそう思っているのか

何も分からないけれど、今は、自分がマシだと思える


「おかえんなさい」


だってただこれだけの言葉がとっても嬉しい

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