第7話 男尊女卑?

介護してる人に聞きたい。


あなたの性別は?


何でこんなことを質問するかというと、

僕の田舎では、「介護=女性の仕事」っていう、

よく分からない公式が成り立っている気がするからだ。


婆さんが一番最初に転んで入院して、歩行困難になった時、

僕の家は初めて婆さんの介護という、新たな問題に直面したわけだ。


「婆さんが退院したら、誰が面倒みるの?」


誰からともなくあがった声。


父や祖父は、真っ先に祖母の実の娘に当たる、僕の母を見た。


僕はイラっと来た。


はあっ? ですよ。


実の娘なら、親の介護をして当然だ?


女なら、介護をして当然だ?


何を時代錯誤的なことを言ってやがる!


いいか? この家は金欠だ。


僕の母だって、働いている。


それなのに、僕の母は家事もこなしている。


これ以上、背負わせたら、僕の母だって大変だってことぐらい、


ちょっと考えたら分かるだろう⁈


僕は父と祖父をにらんで、わざと大声で言った。


「そんなの皆でするに決まってんじゃん!」


父も祖父も、ばつが悪そうな顔してたけど、


だって、介護は自己犠牲じゃないと思うから。


家族が多い場合、一人を人身御供みたいにして、


自己犠牲させんのは、ぜーたいに、反対だ。


だって、婆さんの我の強さは誰もが知ってるし。


と、こんなことがあって、僕の家では皆で介護をすることになった。


もちろん、母や僕が主に介護担当になってしまっているけどね。


だから、ちょっと怖いことを思うんだ。


よく、ニュースで、介護疲れによる無理心中とか、

殺人とか、殺人未遂とか、虐待とか、やってるじゃん。

同情しちゃうんだよね。


「犯行」を行ってしまった人に。


もしも、家族が他にいなくて、一人で介護していたら、

きっと自分も罪を犯すんじゃないかって。


でも、現実には、一人で介護している人も多いから、


本当に頼れるところには全面的に頼ってほしいと思う。


自己犠牲なんて、悲しすぎるよね?


僕はこの「自己犠牲」と言う考え方を変えたけれど、


難しかった。


考え方を変えるのに、何年もかかった。


僕が自宅介護をする理由は、

父と祖父が、介護を母一人に押し付けそうだったからだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る