第6話 婆さんと蜜柑

婆さんは蜜柑が好きだ。


だが、「こたつで蜜柑♪」というレベルではない。


婆さんは寝たきり状態だから、「布団で蜜柑♪」だ。


おい、ちょっと待て。


寝ながら蜜柑なんか食べたら、のどに詰まって、いつか死ぬんじゃね?


でも、心配ご無用。


婆さんは蜜柑の外の皮だけじゃなく、中の薄皮も食べないから。


つまり、薄皮から果汁をすする。


おい、もったいない精神、どこに置いてきた?


しかも、寝ながら蜜柑の汁啜るから、シーツやパジャマの白いところが、

オレンジ色に染まってんじゃねぇか!


僕:「毎回汚すそのパジャマ、一体誰が洗ってると思ってんだ?」


婆さん:「洗濯機」


うわー、何かイラっときたわ。


いや、洗うのは確かに洗濯機。


でも、干したり畳んだりすんのは、僕と僕の母だ。


ここまで人を素でディスれるって、なかなかないよ?


ふざけんな。


僕が自宅介護をする理由は、

絶対婆さんが他の人を傷つけるからだ。


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