第4話 婆さんと鯉

鯉って、皆さんたべますか?


僕らのところでは、年末によく食べられるもの。


何か、詳しくは分からんけど、昔の有名な戦国武将の子孫が、


鯉の煮つけを冬の食べ物とするように言ったらしい。


でもさ、鯉の煮つけって、高価だよ?


正月の贅沢物としても、高いよ?


何でそんなモンを庶民に奨励するのか、意味わからん。


それで、だ。


婆さんはその鯉の煮ものが大好物だ。


だから、法事とかで必ずでるソレを、皆婆さんのために残して持ち帰ってくる。


婆さんは喜んで食べる。


鯉の骨は硬くて尖ってるから、気を付けて食べる。


当たり前だが、皮と骨は残る。


そう、骨と皮は残る。(←大事だから、二回言う)


それからが、問題だ。


婆さんは何故か、残った骨と皮を、丁寧にラップにくるむ。


どちらも燃えるゴミだから、問題はない。


ここからが、問題だ。


何故か婆さん、そのゴミをあるところに突っ込む。


さあ、どこだと思う?


きっと考えもつかないよ?


婆さんがゴミを突っ込んだのは――、爺さんの枕の中だ!


爺さんは寝ようとして、気付いた。


何故、自分の枕元に生ごみがラップにくるまれてあるのか?


嫌がらせ?


しかも、もう枕は生臭くなっている。


嫌がらせだろ、これ。


あり得ない。


「何で、爺さんの枕に骨と皮、突っ込んできたん?」


婆さんに問いただす。


すると婆さんが当然のように言った。


「おすそ分け」


「は?」


どうやら、爺さんが法事で残してきてくれたから、そのお礼と言うのが理由らしい。


僕たちは頭を抱えるしかない。


これは究極の愛なのか、嫌がらせなのか、ツンデレなのか。


もはや、謎。


爺さんは、このいまいち理解できない婆さんの行為によって、


枕カバーを洗うまで、生臭さに耐えつつ眠った。


僕が自宅介護をする理由は、

爺さんと婆さんに、何かあると思うからだ。

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