#60 2年後
ママが亡くなってから2年近く経っていた。
私は高校を卒業し、地元の自動車部品メーカーの工場に就職して、毎日クタクタになるまで働いている。
仕事はキツイし、毎日体中に油や鉄くずの臭いが染みついて大変だけど、「ソウジくんのお母さんの苦労に比べれば、大したことない!」と自分を奮い立たせて頑張っている。
ママの実家とは、ママの葬儀以降も交流が続き、祖父と祖母は私のことを孫として接してくれるようになった。
私なんかでも顔を見せるだけで喜んでくれるならと、月に1度は顔を見せにお邪魔している。
ただ、実家には伯父さん夫婦も同居していて、最近は顔を合わせる度にお見合いをすすめられ、なるべく顔を会わせない様にこっそり祖父たちに会いに行くようにしていた。
住居は、ママと二人で住んでいたアパートは引き払った。
ママが酔っぱらって散々近所に迷惑かけたので、ママの死後すぐに引っ越しした。
今は職場に近いワンルームマンションで暮らしている。
ママの存命中は、二人での生活に地獄の様な思いで耐える生活だったけど、いざ一人ぼっちの生活になると、寂しくて泣いてしまうことが度々あった。
そんな時は、エミが送って来るメッセージの履歴を読み返して、エミのことをいっぱい考えた。
エミとは、ママのお葬式以来会ってはいないけど、メッセージのやり取りは続いている。
エミは律儀にも、1日1回だけメッセージを送ってくれる。
学校のことや受験のこと、そしてソウジくんのこと。
あとは私へのお節介。
そんなエミも、1年前に無事志望校に合格し、今ではソウジくんが通った高校の2年生だ。
受験合格の報告のメッセージを貰った時は、思わずその場で声を出して喜んでしまい、更に通話で直接エミにお祝いの言葉を伝えた。
でも私は嬉しすぎて泣いてしまい、「おめでとう」の一言を言うのが精一杯だった。
エミも泣いてて「ありがとう」と返事するのが精一杯だったみたいなので、おあいこだ。
そんな妹大好きな私のスマホの待ち受けは、エミが高校の制服を初めて着た時に送ってくれた写真にしている。
エミは、私との約束とお願いをずっと守ってくれて、高校にも合格したし、今でもソウジくんのお世話をずっと続けてくれている。
本当に私には勿体ないくらい、出来た妹だ。
ただ、エミも花のJKだというのに、恋の話を全然聞かせてくれない。
恋愛に興味が無いのだろうか?
それともお姉ちゃんには隠しているのかな?
お姉ちゃんは、とても心配だ。
そして
ソウジくんは、この春、地元の国立大学に合格したとエミ経由で聞いた。
何かお祝いのメッセージやお祝いの品を送ろうかと考えたけど、そんなことしたら自分の未練が裁ち切れなくなると思い、何もしなかった。
そう、ソウジくんとお別れしてから2年以上も経つのに、私は未だに忘れられずに引き摺っているのだ。
その日は2時間の残業をした後で、体はもうクタクタで、晩御飯は手抜きしてコンビニに寄ってお惣菜とおにぎりを買って帰った。
自転車を駐輪場に停めて階段を上り2階の廊下に出ると、私の部屋の前に一人の男性が壁にもたれて立っていた。
一瞬で誰だか分かった。
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