#57 姉との別れ
翌日から3学期が始まり、私もお姉ちゃんも学校に行った。
お姉ちゃんは3学期初日から、親が離婚することになったことと転校することを学校へ報告したそうだ。
お姉ちゃんとママの引っ越しは、2週間後に決まった。
そんなに早く離婚って出来るものなの?と思ったけど、ママの精神状態がかなり不安定とのことで、離婚届けだけさっさと出して、早めにこの家から出て行く為らしく、色々な手続きは追々進めるらしい。
引っ越しまでの間、私とお姉ちゃんは自分達のことだけして、パパとママの事は放置した。
パパは家には寝るだけの為に帰ってきているようだった。
ママは一日中寝室に篭って、お酒を飲んでいた。
私は寝る時はお姉ちゃんのベッドで毎晩一緒に寝た。
寝る前にお姉ちゃんは今までの思い出を沢山話してくれた。 私も、ソウジ先輩と同じ高校に行きたいことや、将来の夢とか沢山話した。
向こうでの生活は、ママの実家での同居では無く、二人でアパートで生活することになるらしい。
16年前の不倫で、ママは実家からほぼ勘当に近い状態らしく、今回戻る話になった時もお姉ちゃんが一緒に居る事で多少は態度が緩くなったらしいけど、同居までは許されなかった、とママの代わりに引っ越しの準備で実家の人たちと相談したお姉ちゃんが教えてくれた。
そういえば、確かにママの実家にはこれまで行ったことが無く、祖父や祖母とは会った記憶が無かった。
というか、てっきり、すでに亡くなってるから実家に帰らないんだ、と思い込んでいた。
お姉ちゃんが引っ越していく日、新幹線のホームで私に
『エミ、ソウジくんのことお願いね。 あと勉強もちゃんと頑張るんだよ? エミはお姉ちゃんと違って頭良いんだから、頑張れば絶対大丈夫だからね』と最後まで私とソウジ先輩のことを気にかけてくれていた。
私はもっと沢山話したいことがあったのに、涙が止まらなくて全然話せなかった。
お姉ちゃんとママの見送りは私一人だけで、ママは私と目を合わせなかった。
私は泣きながら、お姉ちゃんが乗った新幹線を見えなくなるまで見送った。
その日、ウチに帰るとお姉ちゃんが残してくれた自転車に乗って、ソウジ先輩のアパートを訪ねた。
ソウジ先輩にお姉ちゃんがママと一緒に今日引っ越したことを泣きながら報告すると、ソウジ先輩はお姉ちゃんからその事を聞いていなかったことが判った。
1日1回のメッセージは来ていたけど、いつも通りの体調を心配したり、勉強のことを応援する内容ばかりだったそうだ。
ソウジ先輩は私の報告を聞いて、慌ててお姉ちゃんに電話を掛けた。
「アミさん! 引っ越ししたって、どうしたんです!? ええ、今エミさんから聞きました。 いや、でも・・・それはもちろん・・・え!?ちょっと待ってください! いきなりどうしたんですか! あ・・・」
お姉ちゃんとの電話は直ぐ終わってしまったようで、ソウジ先輩はスマホを握りしめたまま、しばらく
気を取り戻したソウジ先輩は
「アミさんにエミさんのことよろしく頼まれました・・・それで、僕とはもう2度と会わないって・・・」
「え!?ちょっと待って下さい! お姉ちゃん、そんなこと言ってませんでした!」
「そうか・・エミさんにはそこまで話せなかったのかな・・・」
「お姉ちゃん、やらないといけないことがあるって言ってました・・・あと、ソウジ先輩の妹で居る資格が無いって・・・」
「そんな・・・資格って・・・」
ソウジ先輩と話していたら、段々とお姉ちゃんが考えていたことが見えてきた。
妹でいる資格
二度と会わない
これって、つまり
お姉ちゃんは、まだソウジ先輩のことが好きなんだ
「多分、お姉ちゃんは私達が腹違いの兄妹だって知っても、ソウジ先輩の事が好きだったんだと思います。 好きだっていう気持ちがずっと残ったままだったんだと思います。 だから妹で居る資格が無いって・・・」
「それに冬休みの間、お姉ちゃんは私に料理や洗濯が出来るようにずっと教えてくれてたんです。 きっと自分が居なくなってからのことをその時から考えてたんだと思います」
そうだ
家の様子を見に帰った時だ
あの前後からお姉ちゃんは私に料理を覚えさせようとし始めてた
それに、お姉ちゃんの態度に違和感を感じたのも、確かこの時だった
「どうして今まで気が付かなかったんだろ・・・お姉ちゃん、ずっと一人で苦しんでたんだ・・・私ずっと傍に居て、お姉ちゃんのこと心配で様子見てたのに、気づけなかった・・・」
ソウジ先輩は再びスマホでお姉ちゃんに電話を掛けたけど、着信拒否をされた様で2度と繋がることは無かった。
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