#56 姉の覚悟



 自宅に戻ると既にお姉ちゃんは帰って来ていた。


 お姉ちゃんの話では、ママは多分寝室に閉じこもってて、パパはまだ仕事らしい。



 家の中は、リビングも台所も散らかっていた。

 掃除や洗濯は全然していない様で、台所もゴミが沢山放置されていた。


 そんな家の中の惨状を見て

『エミ、お姉ちゃんと一緒に片付けしよっか。 流石にこのままじゃ、明日から生活出来ないし』と言って、二人で掃除と洗濯、ゴミの処分をした。



 食事は二人で自分達の分だけ作って食べた。


 それ以外の時間はお姉ちゃんの部屋で二人で一緒に過ごした。



 夜9時過ぎにパパが帰ってきたので、二人で1階に降りて、パパの話を聞くことにした。


 パパは開口一番土下座して

「すまなかった。ほんの出来心だったんだ。お前たちにも心配かけたよな・・・本当にすまなかった」と謝り出した。


 私は白けた気持ちでそれを黙って眺めていたけど、お姉ちゃんは

『私たちに謝罪とか要らないから。 それよりこれからどうするの?』と凄く冷めた声でパパに尋ねた。


「あ、あぁ・・・ママとは離婚することになった・・・今月中に地元に戻るらしい」


『へぇ・・・ソウジくんのお母さん捨ててまで結婚したのに、離婚しちゃうんだ?』


「そ、それは・・・」


『まぁいいや。私とエミのこれからの生活に困らない様に、お金だけちゃんとしてさえくれれば。後はなにも期待してないし』


『エミ、聞きたいこと聞けたし、上にいこ』

 そう言って、お姉ちゃんは早々に私の手を引いて2階の部屋に戻った。



 部屋に戻ると、お姉ちゃんは私をベッドに座らせて、正面にしゃがんで私の両手を取って

『エミ、パパとママが離婚したら、お姉ちゃん、ママに付いていく。 エミはここに残って』


「え!? やだよ!お姉ちゃんもここに一緒に残ろうよ! お姉ちゃんと離れたくないよ!」


『ごめんね・・・でもお姉ちゃん、やらないといけないことがあるの。 だからエミはここに残って、私の代わりにソウジくんのお世話をしてあげて欲しいの』


「でも、それはお姉ちゃんもこっちに残って一緒にすれば・・・」


『エミ、お願い。お姉ちゃんの一生のお願い。 お姉ちゃんもソウジくんの傍に居たいけど、でもダメなの。 ソウジくんの妹で居る資格が無いの。 でも、だからこそ私にしか出来ないこともあるの』


「お姉ちゃんしか出来ないことってなに? お姉ちゃんは何をしようとしてるの? ママと一緒じゃないと出来ないことなの?」


『それは言えない。ごめん』


 お姉ちゃんは真剣な顔で私を見つめていた。

 その表情は凄く迫力があって、私が何を言っても説得出来ないと感じた。




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