#53 強がり
ソウジくんのアルバイトは17時までと聞いていた。
プリンはソウジくんが帰って来てから、夕食後のデザートにすることにした。
お昼ご飯は、朝の味噌汁の残りと、インスタントラーメンを作ってエミと二人で食べた。
ご飯を食べ終えて食器を洗い終えると、エミと今後の事を相談した。
『ここには冬休みが終わるまで置いて貰えるように、ソウジくんにお願いしよう』
「それは良いんだけど、冬休みが終わったらどうするの?」
『家に戻るよ。私もエミも学校があるでしょ? 本当だったら明日も学校があるんだよ?』
翌日は月曜日で2学期の終業式があった。
だけどこんな状況なので、二人とも学校を休むつもりでいた。
「でも、家に戻って大丈夫かな? お姉ちゃん、我慢出来るの?」
『それは正直わかんないよ・・・でもソウジくんに迷惑掛けっぱなしは良くない。 ここの家賃だって、私たちが使う水道や電気だって、タダじゃないんだからね?』
「それは分かるけど・・・」
『家に戻ってからのことはその時考えよう? 今はパパとママも私たちも、落ち着く時間が必要だと思うの。 冷静にならないと、今ソウジくんに迷惑かけているように、どんどん周りに迷惑かけちゃうから、ね?』
「うん、分かった」
『それと明日昼間に一度、家の様子見てくるよ。 宿題とかも取りに行きたいし、自転車もコッチに持ってきたいから』
「なら私も一緒に行く」
『エミは留守番してて。 自転車乗るから一人じゃないと帰って来れないし、もしママと顔合わせたらまたエミ喧嘩になるでしょ?』
「だったらお姉ちゃんもじゃん」
『だからだよ。 昨日はエミと違って興奮して全然言いたいこと言えなかったけど、今は少し冷静になったから言いたいことが山ほどあるの。 だから今度は恨み言の1つや2つは言いそうだから、そんな姿をエミには見せたくないの』
『何か取って来てほしい物あったら、メモに書きだしておいてね。 自転車で運べる物なら持ってくるから』
『それと、ここでお世話になっている間は、エミも家事を手伝ってね』
「うん、それは頑張る」
『お料理とかもお姉ちゃんと一緒にちょっとづつでも出来るようになろうね。 さっきだってプリン一緒に作ったけど、簡単で面白いでしょ? 難しく考えなくて良いから、炊飯器でご飯炊くとか、お湯沸かしてインスタントラーメン作るとか、そういうことからでも良いから始めようね』
「うん、やってみる」
『それと・・・』
「えー、まだあるの? なんかお姉ちゃんがお説教臭くなってる。 そんなんじゃ、ソウジ先輩に引かれちゃうよ?」
また胸がズキリとした。
『ソウジくんに引かれても、いいです。 迷惑掛けるよりはマシです』
『そんなことより、後はお金のこと! エミがパパとママの財布から持ってきた生活費、全部出して。 私のアルバイト代の残りも併せて、ココに居る間の生活費として計画立てよう。 出来ればソウジくんにも光熱費くらいは渡したいし』
「そ、そうだね・・・(お姉ちゃんが別人みたいに頼もしくなってる・・・)」
『なんか言った? あと、お菓子買いたかったら、なるべく自分のお金で買って頂戴』
「う、うん、分かった。気を付ける」
それから二人のお金を集めて計算すると、10万ちょっとあった。
思ったよりも多くて、ビックリした。
エミは二人の財布から根こそぎ抜いて来たようだった。
『エミ、提案なんだけど、このお金の一部で、ソウジくんに冷蔵庫プレゼントしない? 今も無くて不便だし、小さいのでもあった方がいいと思うの』
「うん、私は賛成。 プリンも冷蔵庫で冷やした方が美味しそうだしね」
『そそ、そういうこと。 じゃぁ、今夜ソウジくんと相談する時に、冷蔵庫の話もしよっか』
エミとの相談を終えて、コタツで少しだけ昼寝をしてから、夕食の準備を始めた。
アルバイトで疲れているソウジくんに温かい物を食べて貰おうと、鍋料理にした。
と言っても、土鍋は持ってないので、料理用の鍋になるけど。
エミと二人で食材の準備をしていると、具材にお肉か魚が欲しくなって、エミに留守番してもらい一人でスーパーへ追加の買い出しに出かけた。
お肉コーナーで10分以上悩んで、一番安い豚バラ肉を1パックだけ買った。
ついでにポン酢も購入。
アパートに戻り一通り食材の準備を終えると、今度はお米を炊こうかどうか悩んだ。
結局、〆にうどんを食べたいとのエミの意見を採用して、今回はご飯を炊かず、乾麺のうどんを下茹でしておくことにした。
ソウジくんが帰って来る時間に合わせて、鍋の調理を始めた。
帰って来たソウジくんに、二人で「おかえりなさい」と出迎えると、ソウジくんは疲れているはずなのに、笑顔で「ただいま」と言ってくれた。
また胸がズキリとして、ソウジくんと目が合わせられなかった。
ソウジくんが手洗いうがいを済ませて部屋着に着替えたら、早速、鍋をコタツに運んで、3人で食事を始めた。
ソウジくんが遠慮しそうだったので、ソウジくんの取り皿に勝手に豚肉をドンドン入れて行った。
今日、朝から一日、私は心の中でずっと「ソウジくんは兄妹」「ソウジくんは兄妹」とひたすら繰り返した。
ソウジくんを意識する度に、胸がズキリとして辛かったから。
でも、それをエミにもソウジくんにも悟られたくなくて、いつも以上に強がってみせた。
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