#46 秘密の相談
お姉ちゃんがソウジ先輩のアパートから帰って来ると、真っ先に私の部屋に来た。
そして、凄い興奮しながら
『また遊びに行ってもいいって! 次はゆっくり過そうって言ってくれたの!』と教えてくれた。
ソウジ先輩と上手くやれたんだ、ということは理解出来たけど、敢えて落ち着いて貰うために
「お姉ちゃん、何言ってるのか意味分かんないよ。落ち着いて順番に話してくれないと」と宥めた。
『そ、そうだよね! えっと、えっと、何から話せば・・・』
お姉ちゃんは、興奮しながらもなんとか説明しようと、今日あったことを順番に話してくれた。
家具や荷物がほとんど無くて寂しい部屋だったこと。
キッチンはフライパンや包丁が無くて、朝食の準備が大変だったこと。
食器も無くて、一人分しか盛り付けないから、自分はおにぎりを作って食べたこと。
調理器具や日用品なんかを買いに行こうと提案したら、お金が無いと言われ、お金は自分が出すと言ったら断られたこと。
それでも頭を下げてお願いして、最後には了解してくれたこと。
最低限の調理器具や食器、生活用品に雑貨、服や下着、クツ、コタツや本棚も買ったこと。
カーテンは、布を買って来たからコレでカーテンの代わりになる物を私が作ること。
全部で4万円くらい使ったこと。
帰り送ってくれて、別れる時に、また遊びに行ってもいいか聞いたら、笑顔で了承してくれて、次はゆっくりすごしましょうと言ってくれたこと。
「凄いね、お姉ちゃん。 大成功だね」
『実は・・・そうでも無かったんだよね・・・朝食の時に引っ越し祝いに私がお金出すから色々買いに行こうって話して、遠慮するソウジくんに私、頭下げてお願いして・・・』
「あ、そこ!気になった。 なんでお姉ちゃんが頭下げてるの? 普通逆じゃない?」
『えーっと・・・どうしても私のお金使って色々買ってあげたくて、その為にアルバイト頑張って来たから受け取って下さいってお願いしたの。でもソウジくん、頑なで受け取って貰えそうになくて、そしたら悲しくなってきちゃって、涙が勝手にポロポロ出てきちゃって・・・』
「で、結局、お姉ちゃんの涙にソウジ先輩が折れたんだ」
『まぁ、そうなのかな・・・・でも、ちゃんと使うって約束してくれたよ!』
「そうなんだ。次も遊びに行ける約束出来たんなら、良かったね。 でもまた調子にのってしつこくしないように気を付けないとダメだよ?」
『うん、分かってる』
翌週の週末、私も一人でソウジ先輩のアパートにお邪魔した。
私は自転車を持っていないので、バスで行った。
因みに、事前にソウジ先輩と約束していた。
別に遊ぶのが目的じゃなくて、今後のことを相談する為。
なので、今日、私がここに来ることはお姉ちゃんには内緒だ。
ソウジ先輩の部屋は、綺麗に片付いていた。
お姉ちゃんに買って貰ったコタツや本棚のお陰で、ウチに居た時よりも寂しくない感じはした。
ウチに居た時から使っていたテーブルは、部屋の隅に勉強机として使われていた。
キッチンも綺麗にしてあって、ソウジ先輩に聞くと、多少は自炊しているとのことだった。
手土産にインスタントコーヒーと砂糖、あとケーキを手渡した。
早速ソウジ先輩がコーヒーを煎れてくれると言うので、私はケーキを食べる準備を手伝った。
で、ケーキを食べながら、本題に入った。
「お姉ちゃん、大分落ち着いている様です。 でも、まだ話すには早い気がします。 今のお姉ちゃんにはキツイと思います」
「やっぱりそうですよね・・・・先日来た時も、ちょっと情緒不安定なところあって泣かせてしまいました」
「はい、お姉ちゃんからも少し聞きました。 お姉ちゃん、一途なんです。 だからソウジ先輩のことで一喜一憂してて・・・」
「とりあえず、今は急がずに様子見ようか」
「私もその方がいいと思います」
他にも私の進路の相談や、パパやママに対する愚痴を聞いて貰ったりした。
実はソウジ先輩と同じ高校を目指そうと思ってて、勉強のアドバイスを貰っていた。
お昼ご飯にインスタントラーメンを作って二人で食べて、3時間程で私は帰った。
帰り際に照れ隠しで冗談っぽく
「また来るね、お兄ちゃん」と言って、部屋から飛び出す様に帰った。
自分でも思ってた以上に恥ずかしくなった。
そしてご機嫌な気分で家に帰ると、ウチで修羅場が起きていた。
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