#43 将来のコト




 期間限定だったコンビニのアルバイトを無事に終了して夏休みも終わり、2学期が始まった。


 相変わらずソウジくんは忙しそうで、ゆっくり一緒に過ごす時間は無かったけど、それでも1日1回のメッセージは続けていて、ソウジくんからのメッセージも随分文字数が増えていて、焦りや不安は落ち着いた日々を過ごしていた。


 メッセージのやり取り以外に、学校帰りに偶然一緒になってお喋りする機会もあったし、お休みの日に一緒に食事することもあったけど、以前の様に自分からグイグイ行かないように気を付けて接した。

 迷惑って思われないか? 嫌わて無いか? と、かなり臆病気味で慎重だったと思う。


 なんだか、ソウジくんと出会った頃の心境に似てるかも?

 同居のこと口止めして、嫌われたんじゃないかとビクビクしてた頃。






 私自身は、高校卒業後のことを考え始めていた。


 卒業したら進学したいな


 特に今は進みたい分野や学部がある訳ではないけど、勉強は続けたいと思っていた。


 これもソウジくんと一緒に沢山勉強したお陰で、苦手だった勉強も随分頑張れるようになり、成果に結びつけることが出来ていたから、前向きに進学を考えられるようになったんだと自分でも考えていた。




 それに、自分も何か目標を掲げたかった。


 ソウジくんは出て行っちゃうし、部活をやっていない私には、特に目標やすることが無い。


 ソウジくんを見ていると、目標を掲げている人、それに向かって頑張っている人、そういうのに憧れを抱いていた。

 自分には特技も他人に誇れるような才能も無く、やりたいこともコレといって思い浮かばない。


 あ、本当は、ソウジくんの為に何かしてあげたいとは思ってる。 ご飯作ったり耳掃除したり。

 でも、ソウジくんがそれを必要としてない以上は、私に出来ることがない。

 せめて1日1通のメッセージで、労ったり応援したりする程度。


 そんな何もない高校生の私には、ソウジくんの事以外では、勉強を頑張るくらいしか思い浮かばなかった。








 そして、ソウジくんの引っ越しが決まった。


 12月、期末試験が終わり次第、引っ越しをすることに。


 場所は、ソウジくんが通う公立高校に近いアパートで、そこそこ古い建物らしいけどその分家賃は安いそうだ。



 ウチから自転車で20分くらいの距離。


 それ聞いて、(毎日でも通える距離だ)と真っ先に自分が通い妻になるイメージが湧いた。


 アパートのキッチンでエプロン掛けて料理しながら、ソウジくんがアルバイトから帰って来るのを待ってるの。

 料理だけじゃなくて、お掃除や洗濯もしてあげたい・・・



 そんな風になれたら、凄く楽しいだろうな

 幸せ過ぎてどうにかなってしまうかも


 でも、ソウジくんのことだから、遠慮されたりして断られてしまうかな・・・

 たまにでもお邪魔したらダメなのかな・・・



 そんな私の妄想と不安をエミに相談すると

「今みたいに、スキスキオーラ出さない様に気を付ければ、遊びに行っても嫌がらないと思うよ」


『やっぱりそっか、そうだよね! 同居じゃなくなったからって、流石にもう会わないとか無いよね? 会いに行っても大丈夫だよね?』


「たまになら料理作りに行ってあげれば、喜んでくれるかもね。 冬休みになったら二人で遊びに行きたいね」


『うんうん! そうだ! 今からクリスマスに3人で遊べるようにお願いしておこうか?』


「お姉ちゃん・・・また悪いクセ出てるよ。自重してよね」


『あ・・・うん、そうだね・・・』



 こんな風に、今では妹は立派な恋の相談相手であり、優秀なアドバイザーだ。

 そして私も、ソウジくんが一人暮らしすることあんなに不安だったのに、今はもう素直に受け入れることが出来るようになっていた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る