#40 改心




 エミに忠告されてからは、何とかソウジくんに迷惑と思われない様に、夜中にソウジくんの部屋を訪れたりするのは控えた。

 メッセージも、遊びの誘いとかはしないようにして、アルバイトで忙しいソウジくんの体調を労い、心配するメッセージだけを、1日1回だけ送るようにした。



 最初は、ずっと不安だった。

 何も出来ないことが辛くて、焦って、そして寂しくて。


 その不安を紛らわせようと、勉強に集中した。

 昔は苦手だった勉強が、中3の時にソウジくんのお蔭で集中して出来る様になって、そして今、不安で辛い気持ちを紛らわせるのに役に立った。

 丁度期末試験の時期にも重なり、お蔭でなんとか中間で悪かった順位も挽回することが出来た。





 エミとはあの日以来、たまに話し相手になって貰ってる。


 私の不安や愚痴を聞いてもらってるだけなんだけど、それでもエミが居てくれてとても助かった。


 あの我儘で自分勝手だと思ってたエミとこんな風に付き合えるようになるなんて、中学の頃は全然考えても居なくて、その事を言うと照れた顔して「美人でモテモテの姉と、イケメンで優等生の先輩がすぐ傍に居たら、嫌でも鍛えられるよ」と話してくれた。


 ただ、そんなエミが気になることを話していた。


「お姉ちゃん、パパとママはクズだからね。 親だからって全部を信用しちゃダメだからね」

「パパとママにはきっとそのうちに天罰が下る。 私はその時、実の親でも見捨てるよ」


 こんなこと言われたら、よほどの事があったんだろうと聞き出そうとしたけど、「それはまだ言えない」としか答えてくれなかった。


 確かにここ最近、特にソウジくんがウチに来てからのママは、(性格悪いな、もう少し何とかならないのかな)とは思っていたけど、クズとか信用出来ないとまでは思えなかった。


 パパだって、私やエミには優しいし、何がエミをここまで怒らせているのか、さっぱり分からず、そして自分にとっては、パパとママのことよりも、ソウジくんとの事の方がもっと大事で頭を悩ませていたので、エミが言っていたパパとママの話しは、あまり考えることはなかった。






 そんな日々を過ごし、夏休みに入った。


 ソウジくんは相変わらずアルバイトで忙しい毎日で、でも最近はメールの返事も以前の様に少し長い文章で返してくれるようになった。

 私はその事だけでも凄く嬉しくて、でもまた調子に乗って距離を置かれない様に自分に言い聞かせ続け、無理に会おうとはせずに1日1回のメッセージだけを続けた。



 そして夏休み、暇になってしまった私は、ソウジくんには内緒でアルバイトを始めた。


 ソウジくんがウチを出て一人暮らしを始めることは、もう私じゃ止めることが出来ない。 だったら、せめてソウジくんの一人暮らしを応援しようと、何か出来ないかと考えた時、やっぱりお金が必要だろうという結論に至り、学校にも許可申請を提出して、コンビニでアルバイトを始めることにした。



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