Bパート 別離と始末、それからの幸せ
#34 高校入学前
ソウジくんが無事に志望校に合格した。
午前中にメールで合格通知が来たことを教えてもらい、それから急いでケーキを買いに行ってきた。
小さいけどホールのケーキで「合格おめでとう!」とお店で書いてもらった。
その日の夜、ソウジくんの部屋で二人でささやかなお祝いをした。
買って来たケーキとジュースを用意して、ケーキを二人で食べた。
ソウジくんは、珍しくリラックスしている様子で、私も(これでようやく受験が終わったんだ)と、久しぶりに気楽な時間を過ごした。
この日の夜は、二人で沢山のことを話した。
高校に行ったらやってみたいこと。
アルバイトしたり、放課後に遊びに行ったり。
部活はどうするか、高校でも生徒会に入るのか。
高校への通学のこと。
二人とも自転車通学になるけど、自転車を持ってないから買わなくてはいけないこと。
高校のその先の将来は。
大学に進学したいこと。
経済的に厳しいから、その為に奨学金制度を利用したいこと。
そして、高校卒業時にはココを出るつもりでいること。
『そっか、やっぱりそうだよね・・・流石に高校出たら、一人暮らしも出来るもんね』
「そうですね。 あくまで身寄りの無い子供だからお世話になっているだけですので」
『でも、まだ先の話だけど、なんだか寂しいな・・・私も高校出たら、一人暮らししようかな』
「県外の大学にでも進学希望ですか?」
『ううん、そういう意味じゃなくて・・・なんでもない』
(ソウジくんと一緒に居たいから付いていきたい、って流石に言えない)
『そんなことよりも! これで入学式までは暇になったんだよね?』
「そうですね。入学の準備とかはありますけど、だいたい暇だと思います」
『ならまた遊びに行こ? ずっと受験で忙しかったし、夏休み以来遊びに出かけてないでしょ?』
「はい、分かりました。 行きたいところとかあれば、言って下さい」
『自転車買ったら移動も楽になるし、夏休みの時よりは色々なところに行けそうだね』
「そうですね。じゃぁ、まずは自転車を買いに行かないとダメですね」
『ふふふ、そうだね』
しかし翌日、ソウジくんは高校入学の手続きの書類を受け取りに中学に行くと、担任の先生から「安藤は自転車通学になるんだろ? ウチに使ってない自転車あるけどお前いるか? 数えるほどしか使ってないから、まだ綺麗だぞ?」と言われ、その日の内に先生の自宅に行って、自転車を貰って帰って来た。
先生もソウジくんの事情はよく知っているので、気遣ってくれたんだと思う。
更に翌日には近所の自転車屋さんに持って行って防犯登録も済ませて使用できる状態にしていたので、私も慌てて親に自転車を買って貰った。
それからは春休みの間、毎日の様にソウジくんと遊びに出かけた。
市立の図書館には何度も行ったし、市営グランドに隣接する公園にはお弁当を持って花見に出かけた。
他にも、二人が進学する高校への通学路を下調べしに行ったりもした。
何度も二人っきりで過ごす内に、条件反射で手を繋いだり腕を組んだりもするようになった。
この頃の私は、完全に浮かれていたと思う。
受験が終わったことで、ずっと抑えていた気持ちがそうさせていたんだろう。
ソウジくんは恋愛に興味無さそうだし、告白とかそういうのはするつもりは無かったけど、でもソウジくんとこんな風に一緒に過ごせるのは、私だけの特権かの様に思いこんでいた。
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