#35 苦渋の思い
中学を卒業し、無事に志望していた公立高校にも合格出来た。
母との誓いを叶えるためのまだまだ第一歩だけど、久しぶりに緊張感から解放された気がしていた。
ただ、それと同時に新たな悩みも生まれた。
というか、ずっと先延ばしにしていたことと、向き合う必要が出てきた、というべきか。
アミとの関係についてだ。
血縁関係にあることを、アミにいつ、どう伝えるか。
場合によっては、16年前にアミの両親が僕の母にした仕打ちも話す必要が出てくる。
そうなれば、きっと今のアミなら両親を責めるだろう。
そしてその結果、僕はこの家から出て行かざるを得なくなる。
そう考えれば、高校を卒業するまで待って、アミと話せば良いだろうと考えてはいた。
しかし、最近のアミ、特に僕の高校合格が決まった頃から、アミの態度が急に変わってきて、僕は焦り出した。
頻繁に僕の部屋に来るようになり、時には甘えてきたり、時には強引に耳掃除をしたがったり。
二人で出かけることも増え、手を繋いでくることもあった。
アミは恐らく、僕のことを男性として好意を抱いている。
下の妹のエミにも相談してみたが、エミも同意見だった。
(エミは僕にとって唯一、僕等が腹違いの兄妹である秘密を共有している存在であり、このことで相談出来るのもエミしかいない)
アミに対して、妹としての愛情は持っている。
父やあの女と違って、今では憎しみは一切ない。
むしろ、この事でアミを傷つけたくないと思ってるくらいだ。
だけど、知らないまま僕に恋愛感情を持っているとなれば、そうも言ってられない。
兄である僕はアミの好意に応えられない。
将来のことを考えると、下手に誤魔化したり、隠したまま距離を置くよりも、きちんと事実を話して理解して貰うべきだと思う。
その場合、アミはショックを受けるだろうし、隠していた僕のことを憎むかもしれない。
それでも、知らないままで居るよりは、知っておくべきだと思う。
ただし、問題なのは、僕自身のその後の生活だ。
あの家を追い出されてもやって行けるだけの生活力が無い。
当然、寝泊まりする場所も無い。
なので当面の目標を、家を出て一人暮らしを始めることに決めた。
その為に、高校入学後はアルバイトを始めて貯金すること。
目標金額が貯まったら父に相談して、アパートを借りる保証人になって貰うこと。
学業の方は、成績を落とさない様に勉強の方にも力を入れること。
そして、無事に一人暮らしを始めることが出来たら、アミに事実を話す。
その後、どうなるかは分からない。
アミとの縁は切れるかもしれない。
というか、距離を置くべきだ。しばらくは会わない方のが良いだろう。
アミとの楽しかったこの1年間を思うと、とても残念だけど、隠したまま今の関係を続ける方のが危険だ。
しかし、無責任で無神経な父とあの女のせいで、何で僕等子供たちがこんなに悩んで苦しめられなくてはいけないんだ。
しかも当の本人達はそれに気が付かず、自分達は平和で幸せだと思っていることに、理不尽さを感じずにはいられない。
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