#26 疑惑



 そんなお姉ちゃんと安藤ソウジの存在に、ストレスを感じながら中学生生活を送っていると、私は次第に憎しみの感情を持つようになってきた。


 別に何か直接された訳じゃないし、特に安藤ソウジにしてみれば、本人の知らないところで勝手に憎まれてるだけのいい迷惑な話だと思う。

 だけど夏休みに入り、その安藤ソウジとお姉ちゃんから、なんだか怪しい空気を感じ始めると、私の今までのうっぷんが限界に来た。



 最初は、お姉ちゃんがしょっちゅう学校の図書室に出かけては勉強していることに違和感を感じた。


 お姉ちゃんは勉強が苦手な人だ。

 たまに友達と勉強会するくらいなら普通のことなんだろうけど、回数が多すぎる。

 受験生だっていうのがあったとしても、家で勉強すればいいのに。


 夏休みだと言うのに週に3回も図書室に通い詰めている。

 文芸部でも週に1~2回は学校に登校してるらしいので、週の半分以上は学校に行っていることになる。

 それに毎回お弁当を自分で作って持って行っているのにも、違和感を感じた。


 最初は、彼氏でも出来たの?と思ったけど、お姉ちゃん本人に聞いたら、物凄い勢い否定された。


 元々お姉ちゃんは、モテるくせにどこか男子が苦手なところあったし、男友達とかも全然居ないみたいなので、最初は「まさか?」と思ったけど。


 でも、やっぱりこれほど図書室に通い詰めるのは、誰か会いたい人でも居るのかな?と思ったし、家でお弁当用意してる時とか凄く楽しそうで、やっぱり彼氏が出来たのか、それとも好きな人と会って居る様に思えた。

 はっきり言って、お姉ちゃんは”恋する乙女”にしか見えなかった。



 お姉ちゃんの相手は、誰なんだろ?

 そう疑問に思っていると、あることに気が付いた。


 そう、同居人の安藤ソウジ。


 お姉ちゃんと同居を秘密にする話しをした時、お姉ちゃんは事前に安藤ソウジとも相談していた。

 つまり、お姉ちゃんは私と違って、安藤ソウジと会話出来る程度の仲。


 男性が苦手だったお姉ちゃんが会話出来る男子。


 それだけでも怪しく思えた。


 更に、安藤ソウジもお姉ちゃんと同じようにしょっちゅう出かけていることに気が付いた。


 別に二人が付き合って居ようが、私にとっては関係無い話のはずなんだけど、正直言って面白く無かった。


 二人のせいで私はこんなにもイライラしながら過ごしているのに、当の本人達はいちゃいちゃして楽しい毎日なんて、面白いはずが無かった。


 なので、確かめずには居られなかった。




 最初にしたのは、こっそりお姉ちゃんの跡を付けた。

 事前に聞いていた通り、学校の図書室に間違いなく入って行ったけど、中をこっそり覗くと予想通り安藤ソウジも居た。

 しかも二人は同じテーブルに座り、時々会話をしながら勉強をしている様だった。


 いちゃいちゃとは言い切れないけど、それでも二人の関係は親密なのが分かった。



 次に、二人が留守の時に、二人の部屋に忍び込んで、何か二人の交際が解るものが無いか、調べた。


 お姉ちゃんの部屋では、手紙を見つけた。

 机の引き出しから封筒を見つけ、中を見ると1枚のメモ書きがあり、そこには二人がママに隠れて夜中に隠れてこっそり会ってて、お姉ちゃんが寝てしまった時のことや手作りクッキーのお礼なんかが書かれていた。


 次に、安藤ソウジの部屋にも忍び込んで何か無いか、調べた。


 安藤ソウジの部屋は、兎に角物が少なくて、家具もお姉ちゃんが以前使ってたテーブルが1つあるだけだった。

 そんな少ない荷物の中で、押入れにしまってあったショルダーバックから大きな封筒を見つけた。


 その封筒は、弁護士事務所の名前が書かれていて、中には沢山の書類が入っている様で分厚くてずっしり重かった。

 


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