#27 冷静な恋心





 ソウジくんとプールに遊びに行ってからも、度々学校に行っては図書室で一緒に過ごした。

 以前と同じように、真面目に勉強していたし、静かに読書したりお喋りも休憩がてらにちょこちょこ話す程度。


 手を繋いだり、ひざ枕するようなことは全然していない。

 私なりに、線引きしている。






 プールに行ったあの日、ソウジくんと手を繋ぎ、ソウジくんの歌声に涙を流した時から、それまでの浮かれていた気持ちから少しづつ変わって来ている。



 ソウジくんのことを好きな気持ちは変わらない。

 むしろドンドンその気持ちは強くなってきている。


 でも、それと同時に冷静になってきて、ソウジくんの立場や気持ち、周りのことを考え始めた。



 ソウジくんはきっと恋愛に興味が無い。

 私と一緒に居てくれるけど、そこに恋愛感情はない様に見える。


 どちらかというと、友達?ううん、同士って感じかな。

 趣味や秘密を共有する同士。




 たまに見せてくれるあの優しい笑顔は、まるで母親や父親の様な慈愛を感じる。

 それはそれでとても素敵な笑顔なんだけど、男性的な魅力とはちょっと違う。


 だから、私は嫌われては居ないと確信してるけど、同時に恋愛対象として見られてないことも自覚させられる。





 それに、今私が好きだって告白しても、ソウジくんをきっと困らせる。


 私たちが恋人になったりしたら、まずママが許さないだろう。

 パパもなんて言うか分からない。


 そして最悪な場合、この家からソウジくんが追い出されてしまうかもしれない。

 それだけは絶対にあってはならない。

 多分、ソウジくんだってそれくらい分かっている。



 私の個人的な恋愛感情のせいで、ソウジくんを困らせる様なことだけは絶対にダメだ。




 私が冷静になれたのは、きっとソウジくんのあの歌。


 ソウジくんは普通の中学3年生じゃない。

 天涯孤独で他人の家で生活しながら高校受験に挑もうとしている。


 ソウジくんの歌声がそのことを気付かせてくれた。


 ソウジくんの事は大好きだけど、足を引っ張りたくない。

 うん、私に出来るのは応援することだ。



 それに私だって同じく高校受験が控えている。

 恋にうつつを抜かして、私だけ受験に失敗するなんていうみっともない姿をソウジくんに見せたくない。


 宿題や受験勉強で色々協力してくれたソウジくんの為にも、私だって合格しなくてはいけないんだ。





 今は、ソウジくんの傍に居られるだけでも充分幸せなんだから、これ以上は欲張りというもの。

 恋人になれなくったって、大丈夫。










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