#21 耳掃除





 夏休みに入り、二人で学校の図書室に何度も行った。


 ソウジくんに次のお勧めの本を教えてもらうのと、夏休みの宿題や受験勉強をする為だ。 図書室ならクーラーも効いてるし、昼間から堂々と二人で勉強出来るし。


 いつもの様に、おにぎりを二人分と水筒にお茶を用意して、勉強道具持って学校で待ち合わせた。

 朝の10時頃から午後の3時頃まで図書室に居座って、勉強したり読書したり。


 お昼ご飯は、文芸部の教室に行って二人で食べた。

 図書室は飲食禁止だし、他の場所だと、部活とかで登校している人たちに見られて何か噂される可能性があったから。

 文芸部の教室なら、誰か来ることも無いし、ゆっくり出来る。


 そんな感じで、週に2~3回は学校に行って、二人で勉強した。

 因みに、ママには『家だと暑くて勉強進まないから、学校の図書室で勉強してくる』とだけ言った。

 ママからは特に何も言われなかった。 実際にちゃんと勉強してたしね。




 そういえば、図書室で勉強している時に、進路のことを聞いた。


 ソウジくんの志望校は、やっぱり公立の進学高だった。

 市内で一番レベルが高い高校。

 隣の市には更に上の公立高校があるけど、通学の問題(なるべく電車やバスを使わずに通学したい)から市内の高校にするそうだ。


 私の志望する女子高も市内なので、放課後会ったり出来ないかなぁ

 放課後、ソウジくんの高校まで迎えに行くとか、ちょっと憧れる。


 って、付き合ってもいないのに、色々進路の話を聞いてると妄想が広がる。









 夏休みに入って数日経った頃、深夜ソウジくんの部屋でお喋りをしているとあることが発覚した。


 ソウジくん、ウチに引っ越して来てから、耳掃除したことが無い。


 ツメは学校の保健室で爪切り借りて切っているそうだ。

 でも耳掃除は、そこまで気が回らなかったと。


 それを聞いて、私はソウジくんの部屋を飛び出し、自分の使っている耳かきと綿棒を取って来た。



『ソウジくんの耳掃除、私がする』


「え!?いや汚いから自分でします。 耳かきだけ貸して貰えれば大丈夫です」


『・・・・』

 耳かきを持って構えて、無言でじっと見つめた。


「本当に大丈夫ですから。自分でやれますから」


『・・・・』

 無言で「私にやらせろ」と訴えるように見つめ続ける。


「はぁ・・・分かりました・・・ではお願いします」


『ふふふ、じゃぁ私のヒザに頭乗せて』


「はぁ・・・」


 ソウジくんとスキンシップ出来るし、ヒザ枕も出来るし、なんか恋人みたいにいちゃいちゃしてるみたいだし、我ながら、ナイスアイデア。


 まぁ、耳の中の事は敢えて言わないでおこう。

 面倒でもたまに耳掃除しないとダメですよ。



 因みに、私はまだソウジくんと手も繋いだことが無い。

 ヒザ枕のが先に経験しちゃった。

 ソウジくんにヒザ枕した女子なんて、きっと私だけだろう。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る