#16 市立図書館




 ソウジくんは、水色と白のチェックの半そでのシャツに、ハーフパンツとスニーカーで頭にはキャップを被り、私と同じような服装だった。 首にはタオルを巻いて、ペットボトルのスポーツドリンクを手に持っていた。


『おまたせ、ソウジくん』


「暑いですね。 荷物重そうだから、僕が持ちます。降ろして下さい」


『大丈夫大丈夫。自分で持てるよ』


「そうですか。なら辛くなったら遠慮なく言ってください」


『うん、ありがとう!』


「じゃぁ行きましょうか」


『そうだね、行こう』



 市立図書館への道は、毎日歩いている通学路を進み、途中中学校を過ぎて市役所通りを私鉄の駅まで出て、そこから北上する。 中学までがだいたい20分程で、そこから駅までは15分、更に駅から10分程度。


「途中、休憩しながら歩きましょうか。 今日は暑いから水分を取るのも忘れずに」


『うん、分かった。 私、歩くの遅いから、時間かかるかもだけど、ごめんね』


「大丈夫ですよ。無理せずにゆっくり行きましょう」


『うん!』



 ソウジくんと一緒の時間が増えてお喋りするのには慣れたけど、こうして並んで歩くのは、やっぱりドキドキする。


『もうすぐ夏休みだけど、生徒会は休み中も活動するの?』


「一応顧問の先生からは、何日か出てくるように言われてますが、体育祭の計画とか文化交流会(文化祭のようなもの)の計画なんかの作成をするみたいです」


『へぇ~、やっぱり大変そうだね』


「そうでも無いですよ。部活動みたいに毎日あるわけじゃないし、気楽ですよ」

「アミさんは、夏休み中はやはり文芸部があるんですか?」


『文芸部も一応あるけど、週に1~2回だけだよ。 運動部ほどは忙しくないかな』


「なるほど」


『そうだ、夏休みも一緒に宿題してもいい?』


「はい、良いですよ」


『やった。 私、夏休みの宿題いっつも最後の日まで残っちゃって、泣きながらやってたから、今年はソウジくん居たら、宿題も頑張れそう』


「そうですね、がんばって早めに終わらせましょう」


『そういえば、お盆はどうするの? お婆ちゃんが居るんだよね?』


「お盆は・・・母の初盆なので、母の地元に一度帰ろうかと思います。そのついでに祖母にも会いに行こうかと」


『そうなんだ・・・○○県だもんね。遠いから大変だね』


「仕方が無いことですよ。僕はまだ中学生だから、一人では生きていけませんので」


『そっか・・・』



 ソウジくんはまだ子供だからウチで引き取って同居してるわけで、たぶん高校を卒業すれば自立するんだろう。

 まだ先の話なのに、そのことを考えると急に寂しさを感じた。 








 中学校を過ぎて、駅へと続く並木道を歩いていた。

 日差しはかなり強く、二人とも汗を流しながら歩いた。

 歩きながらリュックからタオルを取り出し、私もソウジくんの真似をして首に巻いた。


 そして、暑さのせいで次第に口数が減り、二人とも黙々と歩いた。



 途中、日陰で休憩をしながら11時前には図書館に到着。

 その頃には、シャツは汗でびっしょりで、まずは休憩と水分補給しようということになり、クーラーの効いている館内の休憩室(飲食可)に行くことになった。




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