#04 図書室





 休憩時間になると、ソウジくんの周りに何人もの人が集まり質問責めにしていた。


 私も友達に誘われたけど、断って大人しく自分の席に座り、その様子を眺めていた。

 正直言って、私と同居していることをみんなに知られるのが嫌だったから。




 ソウジくんは、クラスメイト達からの質問に1つ1つ答えている様で、その横顔はやはり”真面目そう”という印象だった。


 彼の周りに居た子たちは、時折りキャァキャァ騒いでてとても賑やかだったけど、ソウジくんだけはずっと表情を崩さないままだった。








 この日は授業は午前中で終わり、午後は部活動だった。


 部活に所属していない人はそのまま帰宅し、部活動のある人は部活の方で持参したお弁当を食べてから部活することになっていた。


 私も文芸部の教室に行き、文芸部のメンバーと弁当を食べてから、資料を探しに文芸部の子たちと図書室に行った。





 図書室に行くと、ソウジくんが居た。


 ソウジくんはまだ部活に所属していないはずで、本当なら帰宅しているはず。確かママはソウジくんの弁当は用意してなかったはずだ。



 ソウジくんは、本を読んでいた。


 相変わらず背筋を伸ばして綺麗な姿勢のまま、静かに本のページを捲っていた。


 私は本来の目的だった資料探しを忘れて、しばらく彼のことを見惚れていた。


「アミちゃん、どうしたの? あの人、アミちゃんのクラスの転校生でしょ? 気になるの?」


 一緒に来ていた同じ文芸部のサクラちゃんに声を掛けられ、慌てて返事をした。


『違う違う! 気になるとかじゃなくて・・・何してるんだろ?って思っただけ』


「ふ~ん。 すっごいイケメンだもんね」


『だから違うって、そんなんじゃないから!』


「まぁまぁ、図書室ではお静かにね。ふふふ」


 サクラちゃんは、何か意味ありげにニヤニヤしてて、私は怒りながらも本来の目的だった資料探しを始めた。





 2時間程資料探しを続け、だいたい目的の資料が揃ったので受付で貸出手続きを済ませて文芸部の教室に戻った。


 図書室を出る時にチラリとソウジくんを見ると、私達が来たときと変わらない姿勢のまま読書を続けていた。






 文芸部の教室に戻ると、ソウジくんの話題が何度も出て来たけど、私は適当に聞き流した。



 4時になるとチャイムが鳴り、部活が終了となった。


 片付けを済ませ下校し帰り道を歩いていると、少し前をソウジくんが歩いていた。


 私は彼と距離を空け、他人のフリをしたままゆっくりと歩いた。





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