#02 食事





 安藤ソウジと名乗るその男の子は、荷物はショルダーバックと恐らく前の中学の通学用のバックだけで、服装は春休みにも関わらず学生服だった。


「こっちがソウジくんと同じ学年のアミで、こっちが今度中学にあがる妹のエミだ」

「二人とも仲良くしてあげてくれ」


「はーい」

 エミは、あまり興味なさげに返事した。


『よ、よろしくお願いします・・・』

 私は緊張して上手く喋れなかった。


 ママは台所から出てこようとしなかった。


 そういえば台所の食卓、4人しか座れないけど、食事の時はどうするんだろ?


『あの・・・パパ? 台所のテーブル4人掛けだけど、食事はどうするの?』


「あーそうか、考えないとな」


 するとママが台所から出てきて、ヒステリック気味に言った。

「一緒の食卓で食べるなんて認めませんよ! 食事は用意してあげるから自分の部屋で食べて貰います!」


 仕方ないかと思う反面、そんな言い方しなくても、と思って居ると

「お気を使わせてすみません。 食事を用意して頂けるだけでも助かります」

 ソウジくんはそう言ってママに向かって頭を下げた。


 ママは返事もせずにまた台所に閉じこもった。



 ママは、とにかくソウジくんの面倒を見ないつもりのようだ。


 私は正直どうすれば良いのか分からない。


 母子家庭でお母さんを亡くして一人っきりになったことには同情する。

 まだ少ししか話してないけど、真面目そうだし礼儀正しいし、悪い子には見えない。

 でも、だからと言って、同居することには抵抗があるし、急に仲良くしようとも思えない。


 正直、憂鬱だ。





 その日の夕食は、ママは宣言通りソウジくんの食事だけ別に用意して、ソウジくんに取りに来させた。


 ソウジくんの食事は、私たちの食事(ハンバーグとポテトサラダとコーンポタージュ)と違い、レトルトのカレーだった。


 それでもソウジくんは「ありがとうございます。頂きます」とママに頭を下げて、自分の部屋に食事を運んで行った。

 ママは返事をせずに、黙ったまま夕食を食べていた。


 エミは相変わらず興味無さそうだった。


 パパは申し訳なさそうにしていたけど、でもママの手前、何も言えないようだった。


 私は、そんなママにもパパにもモヤモヤして、でも、ウチの中がこんなにギクシャクするのもソウジくんが来たせいだと、無性に腹立たしくなった。







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