恋してはいけない人に恋した。

バネ屋

Aパート 育んだ恋心と秘密

#01 初対面



 知りたくなかったな・・・

 こんなことなら、知らなければよかったな・・・

 ソウジくんと出会わなければよかった・・・

 ソウジくんのこと、好きにならなければよかった・・・



 ううん

 違う

 ソウジくんとのこと、後悔なんてしちゃいけない。

 だって、ソウジくんとの思い出を否定することになるから。

 それは、ソウジくんの存在を無かったことにしてしまう。

 私だけは絶対にそれをしちゃダメだ。 


 恨むべきは、パパとママ。

 呪うべきは、私自身。



 もう1度、ソウジくんの歌が聴きたいな・・・










 3年前の、中学2年が終わる3月


 3学期の終業式が終わり春休みに入って2日ほど経った日の夜、食卓で食事をしているとパパが私達家族に向けて突然「報告することがある」と告げた。


 その報告は

「遠縁の子を引き取ることになった。 母子家庭だったんだが母親が病気で亡くなり、ウチで引き取り成人するまで面倒を見ることになる予定だ」



『え? この家で一緒に暮らすの?』


「そうなるな。 すまんが、1階のおばあちゃんが使ってた部屋を使ってもらう予定だ」


 私と妹エミ、そしてパパとママの寝室は2階にある。

 一昨年亡くなったおばあちゃんの部屋は1階の奥にあり、今現在物置状態で普段はあまり近づかない。


「ねえねえ、その子は女の子なの?男の子なの?」


 エミが興味津々に質問した。

 そうだ、女の子か男の子か重要な問題だ。


「男の子でアミと同じ中学2年生だ。 学校も転校してもらい3年の1学期から同じところに通って貰うことになる」


 え・・・同じ歳の男の子と同居なの・・・



 ふとママを見ると、黙っているけど凄く不機嫌なのが分かった。

 多分、事前にパパから聞いていたのだろう。


「えー 男子と一緒に暮らすとか、ムリ~」


「やり難いかもしれんが、何とか上手くやってほしい。 何かあればすぐ言ってくれれば、パパが何とかするから、な?」


「私は面倒見ませんからね。 アナタが責任持って下さいね」


 やっぱりママ知ってて、しかも男の子を引き取ることに納得してないんだ。


「アミ、無理はしなくていいから、少しでも気にかけてあげて欲しいんだ。 頼めるか?」


「アナタ! アミは受験が控えてるんですよ! 変なことに巻き込まないで頂戴!」


「だから無理しない程度にって言ってるだろう」


 そこからパパとママの口論が続いた為、私は自分の食器を片づけ2階へ上がった。




 どんな人なんだろう?


 遠縁と言っていたけど、なんでウチで引き取ることになったんだろう?


 ママがあんなに怒るなんて、よっぽど問題がある子なのかな?


 ママは多分反対したんだろう。パパはそれでも引き取るって決めたのは、何か特別な理由でもあるんだろうか?


 分からないことだらけで、とても不安だ。





 その日から、パパとママがギクシャクしたまま数日経ち、パパがその男の子を連れて帰って来た。



「安藤ソウジと申します。 ご迷惑お掛けして申し訳ありません」

 そう名乗って挨拶をしたその男の子はとても綺麗な顔をしていて、思わず何も返事が出来ず、見惚れてしまった。






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