第2話−1、5話

「おかえ…り」


リビングのドアが開き父シューズ・ローレンが顔を出す。

「おかえり」と言われたら普通は心が温かくなるものだが父のそれは全く感じない。

理由は星の数ほどあると言っても過言では無いが、大きな理由としてうっすらと不気味に笑っているからだろう。

そんな父にリールは言葉ではなく軽い会釈をする。


ーードットットットットット


すると怒り狂っている上司が足を思いっきり鳴らす場面を連想させる足音がリールへ向かって近づいてくる。


「隙あり!」


可愛らしい女の子の声と共に足音が一瞬にして消える。それが示す事はーー飛びかかって来ると悟るリール。


「…うぅ」


間一髪で横に交わした。

そんな自分に金メダルをあげたいと思いつつも襲い掛かってきた張本人がいる方向を向く。


「く…クソーーーーーーーーー!」


そこにはピンク色に染めた髪をグチャグチャにして倒れ込みながら、成人男性の腕ほどあるナイフを片手に憎悪に満ちた声で叫んでいる少女が居た。

彼女はリールの妹ユーウラ・ローレンだ。

まだ中学に上がったばかりのユーウラだがちゃんと殺し屋として生きているらしい。と一目見ればわかる姿をしていた。

それでも、「実の兄にナイフを向けて殺そうとするか!?」と思うところもあるが『しょうがない』の一言で終わらせる。


「ほら夕飯だ行くぞ」


いつもの出来事の為特に感じる事は無いがやはり殺そうとしてきた人に手を差し伸べるのはどうかと思うが、言った通りもう何も感じない。



<ー>暗殺一家の宿命


ローレン家は暗殺一家である。

暗殺一家はローレン家だけではない。

そして暗殺一家の事を、界隈では「開けてはいけない箱(パンドラボックス)」と呼ぶ。

パンドラボックスに嫁入り、婿入りするのは同じパンドラボックスのみと言う決まりがある。

その為パンドラボックスの身内は全員パンドラボックスとなり子孫も絶やしずらくなる仕組みだ。

そして他にもパンドラボックスには絶対に破ってはいけない暗黙のルールが2つ。さっきの合わせて3つある。

それらのルールの事を「光栄なる縛り」オノラブル・バインディングと呼ぶ。

残りの二つは「殺して良いのは犯罪者のみ」そして「子供を2人以上作り家族内で殺し合いをして1人死ぬまで続けろ」だ。

これで今までのリールが思っていたこと、スメナの舌打ちの正体、そしてなぜユーウラはナイフをリールに向けて走ってきたのか。

そう。ローレン家は殺し合いの真っ最中なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

暗殺道中 @Suima3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ