第8話 新しい日常

 あたしは女の子。でもクールを気取りたくて一人でいることが好きな変わった生徒会長だ!

 あたしは美亜ちゃんや美鈴ちゃんと会った後に美術室に向かってみた。きっとあの絵は姫路結ちゃんという架空の存在に見えていたけど違う人物だ。いったい美鈴ちゃんは誰を描いていたんだろう?

 そこに描かれていたのは今のあたしだった。横断歩道を背景にしている。美鈴ちゃんもあの事件をきっかけに変わってしまった一人だったのかな?

 隣には罪人雫?なんだろうこれ。妹らしき人物が結ちゃんっぽい容姿の人と話してる?あの事故の影響力は高かったのは事実だね。


「生徒会長ー、クマのぬいぐるみ持ってないんですね。教室はこっちですよ」


「だな」


 三年生徒の様子が変だ!どうしたんだろう。


「あの、生徒会長?」


「何?」


「えっと、議長の結さんが待ってますよ?」


「この学校に議長の職など存在しない、旗野結はもうこの世にいない」


「あれ、生徒会長が正気?あ、テストの点数よかったですねー…」


 95点かー。あれから5点落ちたなー。


「どうでもいいけど」


「そ、そうですよね」


 それからあたしは話題にされた。前の生徒会長に戻った、という声とようやく生徒会長になった理由がわかった気がするという声だ。


「身分で判断されるのは嫌いだな」


 それから二年の美亜ちゃんが一年の美鈴ちゃんや雫ちゃんと友好を深めているという噂話も聞くようになった。いいことだね!



 放課後は生徒会だ。報告を受け仕事をこなしていく。最近やけにみんな真面目になったなぁ。冗談を言うことも馬鹿にしてくるようなこともなくなってきた。それどころか遠慮はしつつも頼られるばかりで大忙し!



 それから数日後、久しぶりに見回りも兼ねて美術室の絵を見に行ってみた。

 雫ちゃんは美亜ちゃんを描いている。人物像、流行ってるのかな?

 美鈴ちゃんは笑っているあたしだ。今のあたしじゃないね。いつのころのあたしだろう。過去か、未来か、別人か。それは描き手にしかわからないね。

 笑ってみるのはね。


「柄じゃないね」


 でも友達は作れるかもしれないね。


「どうでもいいけど」


 あたしは生徒会長の座を得てどう思ったんだろう?


「別に興味ないね」


 今日のテストは百点だった。


「嬉しくないけど」


 そんなことを思っていたらどこからか声が聞こえた気がする。それは空の上。その声はあたしの親友の結ちゃんの声。


(ほんとに貴方は素直じゃないですね)


 素直か、あたしが素直になったらこの孤独から解放されるのかな?でも素直になったあたしを見られたら失望させてしまうかもしれない。素直になることの恐怖、か。それくらい大したことないよ。それ以上の恐怖を乗り越えてきたんだからね!

 人間、家柄が決まっていても能力がなくても期待される立場にいても挑戦することは自由だ!あたしたちには無限の可能性が眠っている。これから先、孤独になるもプライドを捨てるも自分次第。あたしは自由に生きられる。それができることこそが最高の幸せだ!


 

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入れ替わり少女 @sorano_alice

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