第21話
壁に囲まれた薄暗い『
『第八十八紀 近衛府の四将』だった四人は、白小袖、墨染の
二人の僧と二人の尼僧が、彼らの後ろに立ち、その御髪を短く断つ。
剣士の
術士の
四人とも、二十歳を
彼らは僧の手で
本来の
だが、そのような余裕は無い。
墨染の
だが、こうして
これから……敵地となった故郷『
生きて帰れぬ出陣である。
しかし、誰に乞われたのでも無い。
ただ彼らは、己れの心の命ずるままに死地へと
見守っていた
二人とも、質素な白い小袖に白い無地の
反対側の壁には、現『近衛府の四将』たる
中でも、
顔には血の気の片鱗も無く、今にも崩れ落ちる
死地の中心で、恐怖で民を支配しているのは、今や宰相となった実兄だ。
彼は『
その『気』は地脈の如く帝都を包み、『反逆の志あり』と見なされた者は、忽然と姿を消し、再び誰の目にも止まることは無い。
帝都貴族も士族も、武官も衛士も、我が身と家族のためにと、宰相にひざまずく。
今や、友好国であった『
「……悔いは在りませぬか?」
「決意を翻しても、誰も責めはせぬ。
「御言葉ですが……
希望だけを
「我らは『勝った』のです。我らの帝都王宮への侵入を知った
その誇り高き言葉は、僧たちの、そして
犠牲を見過ごしても、守るべきものはあろう。
犠牲になる仲間も、覚悟していた筈だ。
だが、それこそ敵の望む『
敵に「愚かな
それこそが、自分たちが『正義』である
「……聞き分けの無い子たちばかりで……困りましたね……」
「……五人分ある。捕らえられて、苦しめられる前に……」
五粒の鉛色の小さな丸薬が収まっている。
「
「されど、必要なのは四粒のみ。
「今は、はっきり分かるのです」
童顔だった彼が、今は驚くほど大人びて見える。
「『術士』としての我が『転移』の力は、この時のために備わったのだと。きっと、成し遂げて見せます」
「もうしわけ…ありません……」
「我が兄の非情なる不始末……どうか……私をお連れください……」
「残念!
「泣くのは止めな。色男が台無しだよ!」
しかし、
もはや、言葉は不用となった。
互いの温もりと濡れた瞳が、全てを語る。
託す者と、託された者。
二組の四将は次々と思いを伝え合い、最後に
「これを……君に託す。浄土より流れる四つの川の交わる
「はい……
そして頷き、今生の別れを告げる。
彼らの別れが済んだと悟った
続いている先の廊下には、
王は瞼を閉じ、背を正した。
死地に向かう者への礼節とは云え、王としては全く相応しからぬ態度である。
だが、ひとりの人間として、尊敬の限りを尽くして、王は彼らを送り出す。
『第八十八紀 近衛府の四将』は前だけを見つめ、『
彼らを追い駆けるは、低い読経のみ。
ここは『
今は、宵の
彼らは、ここの
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