第58話 飛来
外に出た瞬間、閃光と熱気に目が
住民たちは避難所へ駆け込み、衛兵は果敢に応戦する。
「なんだよ、これ……ッ」
そう声を漏らす秋人の目には、幾多もの龍が映っていた。
龍の吐く魔力が、結界を
龍の吐く火炎が、自然を焼き殺す。
ドラグニスは火の海に包まれ、地獄と化していた。
「行くぞイリーナ!」
「う、うん!」
グレダは魔法で空へ舞い、飛竜へ立ち向かう。
それに続き、イリーナは武器を持って地上の龍へと飛び掛かった。
「おいアルフ、俺達も……アルフ?」
ガルシオンが呼び掛けるが、秋人の脳裏にはかつて龍に殺されかけた記憶が蘇っていた。
二度とああならないよう、修行を続けてきた。
いつか師のような立派な剣士になる。その過程として、龍をも凌駕する三龍剣に追い付くと、そう決めた。
しかし、いざそれを眼の前にすると──
「アルフ、怯えんな! お前は強い!」
ガルシオンは鞘から飛び出し、回転して無理やり秋人に握らせた。
「岩石の魔物とも、ライオン頭ともやり合った。三龍剣とも剣を交わしただろ。まだ一人じゃキツいかもしれんが──」
「俺らみんなで戦えば、大丈夫でしょ多分」
エルノアが背中を押す。
使用するのが短剣である分、秋人より間合いが短い。
「……ああ、そうだな」
王都でレインに言われた事を思い出した。小振りの龍なら倒せるだろうと。
争わずして進むに越した事はない。しかし、力を示すには避けては通れない道だ。
「──行こう!」
今こそ、培った力を試す時。世話になったドラグニスを救うべく、秋人たちは龍の群れへと駆け出した。
龍が密集している所は危険なので、個々を狙っていく。
「グオオォ!!」
雄叫びと共に、龍の口から炎が吐き出された。
“石火脚”
脚へ力と魔力を集結させ、一気に加速。
秋人とエルノアは炎の下を潜り、龍の懐へと入った。
“地喰い”
三龍剣ソーマから教わった、超低姿勢での移動。エルノアはそのままの勢いで龍の股下へ滑り込みつつ、足を短剣で斬りつけた。
同時に、秋人は跳んで体を捻り、剣の切っ先で龍の首を裂く。空中での身のこなしは三龍剣レインから教わった。
足を負傷し、短剣に塗られた毒で弱体化。首を痛めたことで炎も魔力も吐けなくなり、龍はその場に倒れた。
「よし!」
「決まったね♪」
三年前、龍に殺されかけ、修行を決意した2人。
以来ずっと考えシミュレーションしてきた、対龍(地上戦)戦法である。
もっとも、殺すよりも倒すことを優先したものであるが。歩けず何も吐けずとも、その巨体の一挙一動は周囲を破壊する。
「んっ!」
燃え広がった炎を、ミルフィが魔法で大波を起こし消火。
さらにシーエが自慢の脚力で高く跳び、爪で龍の翼を傷つけた。
「これでコイツはもう戦えない、次行くぞ!」
秋人がそう呼び掛け、4人はまた別の龍へ向かう。
*
一方、グレダとイリーナはそれぞれ激戦を繰り広げていた。
グレダは魔法で空中の龍を撃ち、イリーナは地上の龍を叩く。
「かぁッッ!!」
打ち上げられたのは、あまりに巨大な魔力球。そのまま落ちれば、いや落ちずとも何かに当たった瞬間、大規模な爆発が里を飲み込む。
しかし勿論、グレダはそのような危険は冒さない。
魔力球は分散。近くの魔力(=空中の龍)へ反応しぶつかるよう、魔法を組み込んだ。
「「「「グ、ガ……」」」」
多くの龍がうめき声を挙げ、落下してズズンと地を鳴らす。
倒す程の威力は無い。ただ翼を破損させるのが目的である。
「てやぁッッ!」
イリーナの武器はポールアックス。
彼女の身長をも超える190センチ。先端には槍、その下に斧、斧の反対側には爪があり、多方向への攻撃が可能。
素早い突きで龍に穴を空け、体を回転させて周囲全ての龍を切り裂く。
(……ママ。あたし、やるよ……!)
槍、斧、爪。彼女のポールアックスの素材は全て、討伐された龍を素材としている。
しかしまだ若い彼女は、自分で素材を集めた訳ではない。
「これだけ龍が集まるとは……この中に、奴が居るかもしれん」
「うん、見つけたら絶対に……」
──とそこで、小さな異変に気が付いた。
激昂していた龍の何匹かが、突然に落ち着いて里を離れてゆくのだ。
「ピュイイイイィーッッッ」
叫び声とも違う、笛のような音が鳴り響く。
それは、人間には聞き取れぬ号令であった。
「お前たち、そこまでだ! 先の出来事、この里の人間は関係ない!」
腰に剣を
その姿を、グレダとイリーナは見逃さなかった。
彷徨いし魂を求めて スピニングコロ助 @spinningkorosuke
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