第3話 

 ビクッ!


 オルスは、突然、扉が開く音がしたのでビックリした。


 「それにしてもここは臭いなー」


 No.0200は、この部屋に来たことがあるみたいだ。

 その真偽はわからないが、この部屋については、オルスより詳しいのだろう。


 オルス「それな!俺も参ってたところだったんだよ!」


 オルスは、さまざまな夢を体験してきたこともあって、こういうシュチュエーションには慣れていた。

 オルスは、10歳の頃に、忍者の夢を見た。その夢では、忍者は、常に、二人一組のペアで行動し、実力のある忍者同士がペアになれば、言葉を通わさずとも、一心伝心なほどであった。

 オルスは、忍者の中でも実力が飛び抜けていて、オルスとペアになったの忍者も、実力が飛び抜けていたので、二人は言葉を通わさずとも、互いに何を考えているのかを理解できるほど、素晴らしい関係になった。

 その夢のおかげで、オルスは、気が合う人間であれば、ある程度心を読むことができるようになったのであった。


 No.0200「ところで、とっ捕まえて監禁したってやつはソイツか?」


 オルスは、”No.0200”の心を読むことはできなかった。


 (え!?俺は、捕まえられて監禁されていたの??え、もしかして拷問される寸前だった!?でも、この部屋には、俺以外に人はいなかった訳だし‥‥。あーなるほど!!俺は、捕まえた人を逃してしまった挙句、自分が閉じ込められたという鈍臭い奴なのか。)


 オルスの名推理は外れていた。オルスの頭脳は、ここでも本領を発揮してくれない。

 オルスは、捕まえられて監禁されていたのである。

 そして、オルスを捕まえた人というのは、手術台で横たわっていた人なのである。

 この人物も、オルスと同じ部屋に閉じ込められていたのであるが、その理由はわからない。



 オルス「あぁそうだ。」


 オルスは、”No.0200”の「捕まえて監禁したのはソイツか?」という言葉に対して、即時に返答した。

 オルスの頭の中では、今、この部屋にいるのは、オルスと”No.0200”だけである。

 この状況での答えとしては、通常であれば、”黙り込む”という手段しかあり得ないが、オルスは、即答した。


 (これで解答あってる???)


 しかし、オルスの思考は、その答えにまで辿り着くことができなかった。

 答えに辿り着いていなかったからこそ、オルスは冷静に返事できていたのであるから、逆に良かったのかもしれない。

 しかも、幸運なことに、”No.0200”は、手術台の上で寝ている人のことを、捕まえて監禁した人だと勘違いしたのである。


 No.0200「それで、済んだのか?」


 オルス「あぁ!手こずったが済ませたぜ」


 オルスは、よくわからない質問に頭を迷わせながら、答えた。


 (よくわからないが、この返答で大丈夫だろう。)


 オルスの思考は、意外にも答えに近づいていた。

 ”No.0200”の質問の内容を具体的に説明すると、対象者の体の中にある、ある物を抜き取り、対象者を処分するということ。

 これを、済ませたのかどうかを聞きたかったのだ。


 No.0200「俺の手柄まで取りやがったなクソ野郎!ハッハッハ!」


 オルスの返答は大正解だった。

 オルスの頼りない頭脳が導いたとは思えない最善のルートを辿り、正解へと到達したのだ。


 オルスと会話をしているのは、ギジラベラル王国と敵対しているドガンダンガ王国で暗殺を生業にしてるグループの一員だった。


 そのグループのことを皆はこう呼ぶ。


 ”ゴースト”


 1年前に、ギジラベラル王国では、町の人が忽然と姿を消すという奇妙な事件が起った。

 それから、そのような事件は、半年間続いた。

 そして、ちょうど数日前、夜中、偶然に町の路地裏を徘徊していたおじさんが、町の人を連れ去る黒いマントを着た怪しい人を目撃したのである。

 そのおじさんの言うことは、町の人に信じてもらえないことが多かったが、この事件のことだけは、町の人に信じてもらえたのだ。

 それから、町中では、「お化けみたいな黒いマントを来た人が誘拐犯だ!」という噂が広まり、誰かが”ゴースト”と呼び始めたのが、そう呼ばれるきっかけになったのである。


 オルスが話していた相手は、”ゴースト”の一員であった。

 しかし、オルスには、そんなことはわからない。


 オルスは、何故か、ゴースト一員である 

 No.0200の人の名前を知りたくなり、名前を聞き出す方法を考え、実行した。


 「お前の名前は??」


 ゴーストの一員であるNo.0200は、”コイツ何を言っているんだ”って顔をしている。

 それもそのはず。No.0200の人がヤバイ奴であることは、普通の人であれば気づくはずである。

 しかし、オルスは全く気づかない。

 オルスの頭脳を持ってしても気づかないのである。


 「は?お前…」


 No.0200は口を開いた。

 そして、重要なことを話し出そうとした。




 「言いたいことはわかる。だが、ボスに頼まれて、お前を監視しろって言われているんだ。今俺が監禁状態になっていたのもお前を監視するためなんだ。俺は別に疑っているわけではないがお前を信じているからこそなんだ。」


 オルスは、No.0200が重要なことを言おうとしているにもかかわらず、それをさえぎって、2年ほど前に夢に出てきたスパイの言葉をそのまま真似してみたのである。


 No.0200「バ、馬鹿野郎!俺は何もしてねーよ!!俺の名前はジンだよ。それくらい知っているだろう!それより、ボスは、俺のことで他に何か言ってなかったか?」


 (あの時のスパイは、俺のことを2重スパイだと勘違いしていたらしいが、あの夢での俺の立ち位置は、結局のところ普通の営業マンっていうオチだったなー。夢の無駄使いだと思っていたけど、今日役に立った!)


 オルス「あぁ、ボスは、何か言いたげそうだったが、俺には他に何も言わなかったぜ。隠してるなら早く言ったほうがいいぜ。」


 ジン「何もねーよ」

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夢転移〜夢で得た力をふんだんに使いまくる @jujupagm

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