最終話

「どうしちゃったのよお、あい」

 後ろの席の結が私に話しかけてきた。

「え、なんか。普通に知ってたから。」

「え、今まで私フランスにいたはずだけど、教室に戻ってきてる……。ナニコレ?」

「何言ってんのよ、あいはずっと机に突っ伏して寝てたわよ。」

「ちがう、私はね、目が覚めたらフランスにいて、ルイさんやロべスと一緒にいて、今さっき、ルイさんが、ルイさんが……」

「どうしたの?」

あいの友達の結は、心配そうに彼女を見つめた。

「ギロチンで、死んじゃった……」

「んん、まあ、私にはよくわかんないけど、とにかく元気出して。ほら、飴あげるから。」あいは飴を「ありがと、」といって受け取った。

 ルイさん、家族を大事にしてたんだと思う。ルイさん、国を大事にしてたと思う。つまり、ルイさんにとってどちらも大事だった。


 ああ、そういうことか。


 ロべスは死ななければならないと言っていた意味が、閃いた。

 ルイさんは愛していたんだ。ルイさんと愛。なんだかとってもお似合い。

 フランスを守り、家族を、マリーさんを守るためには、あの状況では、ルイさんが死ぬしかなかった。

 なんて残酷なんだろう。ロべスの理想は、ルイさんを殺してまで手に入れたいものだったのかな。

 理想って、難しいね。愛することって、難しいね。でも、愛を貫いたルイさんって、なんだか素敵だね。でも理想を貫いたロベスだって素敵。私はにっこりと微笑む。

「あいさん!ゆいさん!私語は謹んで、ちゃんと授業を聞きなさい!」

 しっかりしろよ~、とクラスメイトの笑い声が、教室に響き渡った。

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るいとあい 紫田 夏来 @Natsuki_Shida

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